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米国アレルギー・喘息・免疫学会

 2011年度の米国アレルギー・喘息・免疫学会(American Academy of Allergy, Asthma & Immunology, AAAAI)が3月18日から3月22日まで、サンフランシスコで開催されました。東日本大震災の影響もあり、我が国からの参加者は例年に比べると少なかったですが(発表者だけというところが多かったように思います)、永田センター長を始め呼吸器内科スタッフの協力もあり、当センターからは筆者と高久洋太郎医師が、それぞれポスター発表して参りました。筆者は、マウス好中球性気道炎症モデルにおけるドーパミンD1受容体拮抗薬の効果とその機序、高久医師は、気管支喘息患者における呼気凝縮液中の脂質メディエーターの解析に関する発表です。
 AAAAIは3回目の参加ですが、アレルギーの本質に迫るという点で、「AAAAIこそ真のアレルギー学会だ」と毎年のように思います。根底にアレルギーの原因となるアレルゲンの研究があります。さらに、より能動的なアレルゲン対策であるアレルゲン免疫療法のセッションがほぼ毎日あり、免疫療法に関するポスター数も多くあります。
 今回の学会で目立った話題としては、アトピー素因(アレルギー素因)とウィルス感染との関連があります。喘息患者さんでは、インターフェロンなどの抗ウィルスサイトカイン産生が低下し、ウィルスに感染しやすいことが言われていますが、アトピー素因またはIgE(アレルギーの原因となる免疫グロブリン)高値が、ウィルスに感染しやすい要因となるというデータが多数報告されていました。血清IgEの値は、樹状細胞のIgE受容体発現と相関し、またIgE受容体発現の高い樹状細胞では、ウィルス感染に伴うインターフェロン産生が低下するようです。一方、ウィルス感染がアトピー素因を誘導するかについてはあまり報告がありませんでしたが、一つのグループが、マウスモデルでの検討を報告しておりました。センダイウィルス感染後に、肺樹状細胞におけるIgE受容体発現が亢進し、センダイウィルスに対するIgEだけでなく総IgEも上昇し、この系にCD49d陽性好中球が関与するとのことでした。実際にヒトでもウィルス感染後に、樹状細胞におけるIgE受容体発現が亢進するとのデータも示しておりました。
 また好酸球のセッションでは、小林威仁医師の留学中の仕事がMayo大学Kita教授により紹介され、拍手喝采されておりました。
 しかし参加のたびに、学会の規模が小さくなっている感じは否めず、不況の影響を完全に受けているように思います。例えば以前は出されていたランチボックスは今年も無く、学会指定ホテルから会場への送迎バスサービスも限定されていました。しかしそのなかでも学会としての質を維持しているのはさすがで、本来学会は質が担保されていれば十分と思います。我が国の医療状況も大変厳しく、規模縮小せざるを得ないところも全国的にたくさんあります。そのなかで我がアレルギーセンターも、質は担保できるように頑張りたいと思いました。(文責中込一之)

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