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こどもの咳の診断と治療のガイドブックを出版しました

咳嗽は日常診療で出会うことの最も多い症状の1つですが原因は様々です。このたび、こどもの咳嗽の診断のみちすじや治療の考え方などについてまとめた “こどもの咳嗽 診療ガイドブック”を、徳山が会長を務めておりますニューロペプタイド研究会が編集し刊行いたしました。以下にその序文を抜粋いたしましたのでこどもの診療に当たられる先生方にはご一読いただければ幸いです。


日常診療の場で咳嗽を主訴として受診する小児は数多くおります。咳嗽は患児のみならずその保護者のQOLをも著しく悪化させることは多くの調査で明らかになっており、適切な管理計画や治療が必要です。
咳嗽の原因の多くは急性の呼吸器感染症ですが、それ以外にも気道アレルギーや異物、先天奇形など様々な非感染性因子が存在します。また、咳嗽の持続期間は多くは一過性ですが時に長引きます。このような長引く咳嗽は急性のものと区別し、遷延性咳嗽あるいは慢性咳嗽と呼ばれます。一般に咳嗽の持続が長引くほど非感染性の因子による咳嗽の頻度が増えるとされ、非感染性の因子に対しては感染症に対する治療反応性は当然ながら低下します。このように病因論的に咳嗽の原因は多様であるため、治療に当たっては鑑別診断が重要となりますが、日常診療の場では、治療薬を投与しその効果を判定する治療的診断が行われることも多いと思われます。しかしながら、すべての咳嗽に有効な万能の“咳止め”の薬があるわけではなく、種々の治療に反応せず、難渋する症例も少なくありません。特に長びく咳を訴える患児に対し、的確な診断ができず不必要な薬が漫然と長期間にわたって投与されている場合を見受けることも時にあります。
このような状況が起こる背景の1つとして医学教育において個々の咳嗽の病態を診断し適切な治療を行う系統的な教育がなされてこなかったことがあげられると思われます。その理由として特に小児の咳嗽に特化した教育を行う上で必要かつ十分なテキストが存在しない現状があると思えます。
本書の編集を行ったニューロペプタイド研究会は1993年に設立された、小児科医を中心とした研究会です。本会の目的は小児の呼吸器・アレルギー疾患の病態に果たすニューロペプタイドの役割の解明で、定期的に研究集会を開催してまいりました。咳嗽のメカニズムは本会の主要な研究課題の1つと位置づけられ、咳嗽に関連したテーマを多くの機会に取り上げてまいりました。その経緯を通して、専門の先生方のみならず一般実地医家の先生方や研修医が小児の咳嗽を診療する上でのマニュアルあるいは教科書的な特徴を持ったガイドブック作成の必要性を痛感し、本書の刊行に至りました。刊行目的を実現するため、本書では小児アレルギー病学、小児呼吸器病学、小児感染症学にご造詣の深い専門の先生方に分担執筆をお願いいたしました。本書をご活用いただきご感想、やご批判を仰げれば幸いです。
小児の“咳嗽学”は、学問的に必ずしも十分なエビデンスが得られていない未知の領域を多く含む分野です。本書の存在が今後のこの分野の発展に多少とも貢献できれば望外の喜びです。  (文責:徳山研一)

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