第80回アレルギーフォーラムが第三講堂で行われました。今回は草加市立病院消化器内科部長の渡辺翔先生に「消化器内科医からみた成人期の食物アレルギー」について講演いただきました。食物蛋白誘発性胃腸症(FPIES)は、小児科領域では知られている疾患ですが、近年成人でも増えていることが指摘されています。渡辺先生は、消化管アレルギーを専門とする、新進気鋭の先生です。特にFPIESの診療経験が豊富で、その臨床データをまとめた内容をAllergyなどの一流紙にすでに何本も発表しております。また渡辺先生は、FPIESを含む消化管アレルギーの疾患普及活動にも力をいれております。

講演いただいた渡辺先生
講演では、FPIESの症例提示から始まりました。とある学生やとある研修医の症例が紹介されましたが、途中で「私は」とばらしてしまい、すべて渡辺先生自身が体験したエピソードであることがわかってしまいました。消化器内科では過敏性腸炎と診断され、アレルギー科では特異的IgE抗体は陰性でアレルギーではないと説明されたそうです。FPIESでは、他の患者さんも同様のエピソードを経験しており(診断に難渋しており)、「アレルギーではないとの診断も重い」とのコメントは重いものでした。
渡辺先生は、研修医のころに自分でFPIESを診断し、その後この病気を含む消化管アレルギーを専門にしたとのことでした。草加市立病院では消化管アレルギー外来も行っており、一般の食物アレルギー(即時型アレルギー)に対しても食物経口負荷試験などを行っています。
FPIESは、強烈な腹痛、吐気・嘔吐、下痢などの胃腸炎症状を呈しますが、食物に対する特異的IgE抗体は陰性となる消化管アレルギーです。一般の食物アレルギー(即時型アレルギー)と異なり、皮膚症状や呼吸器症状を合併せず、食後数時間経過してから症状が出るため、診断が難しいという特徴があります。特にエビ、カニ、牡蠣などの海産物が多いそうです。激烈な症状のわりに、腹部症状は軽度で、また翌日にはケロッと治っていることが特徴です。FPIES患者の胸部CTにおける小腸の広範な拡張や浮腫の所見はとても印象的でした。
また類似疾患として、好酸球性胃腸炎などの好酸球性消化管疾患(EGIDs)が挙げられます。大まかにいうとFPIESは臨床診断、EGIDsは組織診断、またFPIESは急性経過、EGIDsは慢性経過とのことですが、両者のオーバーラップもあるのではとの見解でした。
これらの疾患は知らないと診断できないという点で、本講演は大変有用なものとなりました。特に自身が患者を経験している立場として、鑑別疾患のポイントなども説明いただき、疾患の大枠を理解することができたと思います。渡辺先生は、埼玉県で働かれている先生ですし、今後もお世話になると思いますが、どうぞよろしくお願いします
(文責:呼吸器内科 中込一之)
