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WAO国際科学会議の御報告

 2010年12月4日から8日まで中近東はドバイ国際会議場において、世界アレルギー学会World Allergy Organization(WAO)が主催するWAO-International Scientific Congress(WISC)が開催されました。WAOは隔年で盛大なビッグ・カンファランスを開催していますが、このたびその間の年にテーマを絞った国際科学会議を開催することになり、今回がその第1回目、テーマは「気管支喘息とその合併症」でした。世界各国のアレルギー科、呼吸器科、小児科を中心に、トップクラスの研究者が集結する学術集会となりました。
 プレナリー(全体)講演で、会長のRichard F. Lockey教授(米国)は、「気管支喘息の合併症」について、アレルギー病態に起因するアレルギー性鼻炎・結膜炎、アトピー性皮膚炎などがまず重要であることのほかに、vocal cord dysfunctionやcystic fibrosis、COPDなどの気道系疾患や睡眠無呼吸症候群、胃・食道逆流、また精神神経疾患などの関与の重要性を指摘し、治療抵抗性の一部としてのこれらの臨床的意義を強調されました。プレナリー・シンポジウムのひとつで、カナダのPaul O’Byrne教授は難治性喘息の注目すべき新規治療として、1.気管支鏡をもちいて平滑筋を熱処理するBronchial thermoplasity, 2.重症喘息で好中球炎症を伴うタイプに対するCXCR2拮抗薬、3.ステロイド抵抗性の好酸球性重症喘息における抗IL-5の有用性などについて講演されました。今回、日本人の招待スピーカーは少なかったですが、WAOの理事であり、これからの日本を背負う、相模原病院小児科の“世界のエビサワ”海老沢元宏先生が食物アレルギーについての招待講演をされて気を吐かれていました。
 埼玉医科大学アレルギーセンターからは呼吸器内科の西原冬実医師、増本愛医師が、日本人の重症アレルギー性喘息患者において、抗IgE治療は喘息症状や気管支の炎症病態を改善させるものの、鼻炎症状については追加効果が有意に表れなかったことを報告し、注目を浴びていました(写真)。この対象症例はセンター長が主治医をしている患者さんたちですが、直接の研究指導・制作は呼吸器内科の高久洋太郎医師によるものです。ポスターながら吸入ステロイド+長時間作用型β2刺激薬配合剤の大規模研究として名高い”GOAL研究“の筆者Eric Bateman教授などに質問攻めにされていましたが、西原医師はよく“戦って”いました。
 センター長は今回、“Immunotherapy and immunomodulators in asthma and rhinitis”(気管支喘息とアレルギー性鼻炎の治療における免疫療法と免疫修飾治療)のシンポジウムの座長としてこの学会のお招きにあずかりました。この学会のシンポジウム座長はいわゆる西側社会と、ご当地アラブ世界から各1名ずつのセットでデザインされているようであり(例:米国の教授+地元ドバイの教授のペア)、小生はどうやら西側扱いのようであり、“相方”はリビア大学呼吸器・アレルギー内科のAhmed Elbousify教授というかたでした。なんやらイスラム戦士の高級軍人といった感じの、とても迫力のある先生でした(写真)。演者は米国における免疫療法の大家Harold Nelson教授、イタリアの大教授で舌下免疫療法の世界的権威Walter Canonica教授、そして英国きっての女流教授であるGlenis Scadding教授の3名であり、これらの超一流の先生方のご講演の司会と討論、そしてこのシンポジウムのclosing remarks(閉会の辞)を担当させていただき、大変に光栄な思いをさせていただきました。
 ドバイは正に“砂漠のなかの巨大なオアシス”!ちょっと裏にはいると砂っぽくて、なるほど昔は彼ら、ここでラクダに乗って暮らしていたんじゃな~などと思いをはせるものの、現在のドバイは筆者が90年代よく闊歩していた米国シカゴなどをも遙かに超える超・摩天楼世界。地上828メーターにそびえる“現代のバビルの塔”(写真)や、海岸沿いに帆船のような美しいシルエットをたたえる世界最高峰の“7つ星ホテル”(このふたつがドバイの重要なシンボルらしい)、また地球地図をかたどった巨大埋立地など、なにもかにもが超・ド級。しかし人々はしばしばアラブ民族衣装に身を包んで、ゆったり、おっとり、まったりと。。。ホテルですら完全にお酒を出さない日があったり、とても信仰深いひとたちの、限りなく豊かなクニであることを実感しました。センター長はアラブの豆料理食べすぎ?でお腹を壊滅的にこわしてしまい参加できませんでしたが(体弱い!)、西原・増本両医師は、“世界のエビサワ”とともに砂漠のサファリツアーにも参加してこの世界の独自の文化を楽しんできました。自分としても初めてのアラブ・イスラム圏で、国際的な仕事を担当させていただいた、大変に貴重な機会となったとおもいます。お招きをくださった、またこの学会の成功を導いたスタッフのみなさまの、ご尽力に敬意と感謝を申し上げる次第です。(文責:永田真)

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