第8回アジア太平洋アレルギー・喘息・臨床免疫学会議(Asian Pacific Congress of Allergy, Asthma and Clinical Immunology, APCAACI)が11 月5 日から9日までシンガポールにおいて開催されました。韓国、台湾、オーストラリア、インド、シンガポール、フィリピンそして日本などが主力の学会ですが、今回はプレナリー(全体)講演8、シンポジウム22、ワークショップ6、プロ&コン(ディベート)3などに加えて一般演題も200数十題となかなか盛況の学会となりました。加えて米国、英国などからトップラインの有名教授や一流研究者が招待演者として集結し、アジアの地で臨床免疫・アレルギー学に関わる最新の知見のUPDATEが網羅されることとなりました。
大きく注目を浴びていた話題は基礎免疫学の新知見の数々に加えて、病因アレルゲンの解析の進歩、アレルゲンに対する耐用導入、とくにそのなかで食物アレルギーにおける“食べて治す”経口免疫療法や舌下療法をふくむ改良型アレルゲン免疫療法、などが盛り込まれていました。成人喘息管理のシンポジウムでは早期診断の重要性や抗炎症療法、とくに末梢気道の重要性、また長時間作用型β2刺激薬の使用に際する慎重な立場での講演などがありました。またアレルギー専門医育成にかかわるシンポジウムが開かれ、米国等と同様、韓国でもアレルギー体質に起因して多岐多彩に発症する複数の疾患をトータルに管理・治療する”Total Allergist”育成の教育が当然のように行われていることに愕然とせざるをえませんでした。会場で聴いていたセンター長は、世界アレルギー学会の臨床教育委員の末席にいる関係で座長から突然指名されてしまい、日本の現状についてコメントさせていただきました。日本は例えば呼吸器内科などの既存診療科をベースとしてsecond specialtyとしてアレルギー診療・教育を行う専門医制度ができていく段階で、まだ歴史が浅く、米国や韓国なみの”Total Allergist”が活躍してゆく時代はこれからとおもわれます。日本の医科大学として早い段階からアレルギーセンターを立ち上げることができた、本学の責務は非常に大きいものとおもいます。
さて埼玉医科大学アレルギーセンターからは、センター長が「重症喘息」「アレルゲン免疫療法」の2つのシンポジウムに招待演者としてお招きを頂戴し、各々講演をさせていただきました。2本とも英語でちゃんと笑いがとれていました!!?加えて呼吸器内科に所属する若手臨床部門員の山口剛史医師、西原冬実医師がそれぞれ「β2刺激薬のアレルギー性炎症への悪影響」「日本人重症喘息患者における抗IgE抗体の治療成績」について、ポスター発表を行いました。
シンガポールは貿易都市国家としての豊かさと、またコスモポリタンとしての活気に満ち満ちていました。特に英語を国語とする国家らしく、世界の第一人者たちに交じって、若手の地元医師たちが率先してディスカッションに加わっていく姿勢には大変に好感を覚えました。我々は講演や発表などの“仕事”が終わったあと、有名なラッフルズ・ホテルで元祖シンガポールシリングを味わい、またこの国独特の文化やグルメなども堪能させていただき、英気を養って日本に帰ってきました。(文責:永田真)