11月14日木曜日夕方、第76回アレルギーフォーラムが開催されました。山形大学第一内科の井上純人先生より「健康寿命延伸のための吸入指導」というタイトルで、現在の喘息診療の問題点、特に吸入指導に力点をおき、講演をいただきました。本学の講堂での現地開催とオンラインとのハイブリッド開催でしたが、第3講堂で直接講演くださいました。井上先生は、私とほぼ同世代で、埼玉県の春日部出身で、その後山形大学に入られてから、第一内科に入局され、主にCOPDや喘息の診療や研究に携わっていらっしゃいます。臨床に真摯に取り組まれていて、視点も鋭いなあと普段から感心しており、是非ご出身の埼玉で講演いただきたいとお願いしたころ快諾いただきました。講演前に当院のアレルギーセンターの外来にご案内し、看護師さん中心で行われている当院での吸入指導も説明させていただきましたが、大変お褒めをいただきました。
講演では、現在の喘息診療の問題点を説明いただき、特に様々なClinical Inertia(臨床的惰性; コントロールが不十分であるにも関わらず、積極的な治療介入がされていない、もしくは先延ばしにされている状態のこと)について解説いただきました。医療者側のClinical Inertiaの話は、まさにその通りで、私もいつも反省させられます。その後に井上先生が山形でなされてきた吸入指導体制の確立の話とともに、吸入指導の実際について解説がありました。
喘息の日常外来診療におけるTipsについても言及がありました。「ちゃんと吸入できていますか」という声掛けでは不十分で、具体的なことも入れたほうがよいとのことで、例えば「吸入後にしっかり息を止めてくださいね」などが良いそうです。私も定量噴霧式吸入器(MDI)の場合には「ゆっくり大きく吸入してくださいね」と声をかけているのですが、MDI製剤によっても差があることを示していただきました。
また本講演は埼玉県アレルギー疾患事業受託事業であり、埼玉県のHPにも告知しており、多くの県内の医療関係者の視聴がありました。教育講演では小児科の板澤教授より「アレルギー疾患における学校生活管理指導票の効果的な活用法」についての講演があり、特に患者さんの家族からのメッセージには心打たれるものがありました。本講演会は内科、小児科だけでなく、当院関連の医師、研修医、看護師、学生にとって、大変勉強になったと思います。
この場をお借りして感謝申し上げます。(文責:呼吸器内科 中込一之)
講演いただいた井上純人先生