日本にはアレルギー疾患対策基本法が制定されています。アレルギー疾患の予防と知識の普及、アレルギー診療の均てん化推進、アレルギー疾患を有する方の生活の質の維持向上、さらに研究の推進などについて定められています。すなわち正しいアレルギー診療の推進が法的にもサポートされる、国の方向性が示されているのです。その背景にはアレルギー疾患が今や国民病ともいえる、大きな問題となっていることがあります。
アレルギー患者はしばしば一般内科・小児科などのプライマリケアや、また救急医療の場を訪れます。アレルギー疾患の中には寛解し難く、しばしば致命的なアナフィラキシーショックを呈する食物アレルギーや、全身ステロイドの副作用等の問題も生じる重症喘息などが含まれます。ひとりの患者に同一アレルゲンから複数の疾患が発症することも問題となります。例えば代表的な生活環境アレルゲンである家塵ダニは、アレルギー性鼻・結膜炎、気管支喘息、アトピー性皮膚炎、食物アレルギーのいずれにも関与します。花粉症から喘息の増悪が生じたり、また食物アレルギーが発症することも日常的にみられます。管理・治療にはアレルゲン免疫療法、アレルゲン皮膚テスト、重症例での分子標的治療が発達していますが、これらはアレルギー専門医に課せられた責務であって、プライマリケアの場では適切な初期対応とともに、専門施設への適切な紹介のタイミングを逃さないことが重要です。
そこで研修医(レジデント)や第一線の医療の場で活躍されるジェネラリストの先生がた、またメディカルスタッフなどに知っておいていただきたい、基本的な病態と診療の基本知識を提供する本を出版させていただきました。本書が日本のアレルギー診療の向上に貢献できるガイダンス的な1冊となり、アレルギー患者さんの役に立っていくことを期待するものです。
(文責:永田真)