当アレルギーセンターを擁する埼玉医科大学病院は、2018年3月に埼玉県で唯一のアレルギー疾患医療拠点病院となり、県よりアレルギー疾患対策事業の委託を受けております。その事業の一環である、アレルギー疾患県民情報提供事業として、埼玉医科大学の公式市民公開講座の「アレルギー」特集が、2024年1月20日(土)13時30分より埼玉医科大学川越クリニックビルの6階大会議室とならびにWEBでのハイブリッド開催にて行われました。当日はWEBの事前登録はすでに満員とのことで、本学公式市民公開講座としても最大の盛況ぶりということでした。市民の皆さんのアレルギー疾患への関心の高さがうかがわれました。
喘息についての講演をする筆者
二本立ての内容で、前半はまず筆者(呼吸器内科教授/アレルギーセンター センター長 永田真)より「喘息(ぜんそく)の正しい知識」について話をさせていただきました。筆者が副委員長を務めております日本アレルギー学会の「喘息予防・管理ガイドライン」に基づき、喘息の病態、診断、アレルゲンなどの病因とその対応、そして年々進化する治療薬についてお話をさせていただきました。特に喘息では吸入性ステロイドを中心とした吸入療法が標準的とはなるものの、過半数を占めるダニ・アレルギーの患者さんでは、いわゆる“体質改善”にあたるアレルゲン免疫療法が可能な場合があること、また重症例では気道の炎症を起こしている各種の物質をピンポイントで阻害する、各種の生物学的製剤(抗体医薬)が成果を上げていることなどをお話いたしました。
後半は皮膚科の宮野恭平講師が、「アトピー性皮膚炎の治療は外用薬だけではありません」とのタイトルでお話をされました。アトピー性皮膚炎では、長年にわたり保湿薬やステロイド、タクロリムス軟膏を中心とした外用療法が管理の中心でした。ところがこの数年間でアトピー性皮膚炎治療は大きく様変わりしました。外用療法の選択肢が増え、とくに中等症から重症のアトピー性皮膚炎に対しては、炎症やかゆみを起こしている物質の作用を特異的に遮断する生物学的製剤が登場し、さらに最近は経口薬によって各種サイトカインの産生を抑制できるJAK(ヤヌスキナーゼ)阻害薬が用いられ、大きな福音となっています。宮野先生は外用療法の誤解しやすいポイントも含めて、これらの新規治療をわかりやすくお話いただき、参加者にもとても聴きやすかったと思いました。
ご質問に答える宮野講師
近年はアレルギー疾患をお持ちの方が増えており、参加された皆様も講演を熱心にお聞きくださっていました。各講演終了後には皆さんからのご質問に回答させていただき、活発な質疑応答であったと感じます。参加者とそのご家族や大切な方々にとって、意義のある市民講座となったと考えます。来年度も「アレルギー」について特集した埼玉医科大学市民公開講座の開催を予定しております。アレルギー疾患では民間医療などで医学的証拠のない検査や高額な商品も横行しているなどの問題がありますが、実は現代医学におけるアレルギー疾患の治療はめざましく発展してきています。最新の診療を知っていただきたく、お身内等にアレルギー疾患患者さんがおられる市民の皆様の、ご参加、ご聴講をお待ちいたしております(文責:永田真)