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2023年11月23日 アレルギー・好酸球研究会2023が開催されました

好酸球は白血球の1種であり、昔から寄生虫に対する免疫応答を担っているものと理解されてきました。ところが1980年代終盤から、好酸球は喘息などのアレルギー疾患において、病態の難治化に関与する炎症性細胞としての意義がクローズアップされ、現在ではアレルギー疾患の病態を司る重要な細胞と認識されています。我が国にはその時代1988年に、日本の喘息ガイドラインの父でありセンター長(永田)の恩師のおひとりでもあった故牧野荘平先生(当時獨協医大アレルギー内科教授)が初代代表となり、アレルギー領域における好酸球についての研究成果の発表の場として「アレルギー・好酸球研究会」が設立され、以降毎年1回その学術集会が開催されてきました。現在はセンター長(永田)がこの研究会3代目の代表に選出され、当センターがその運営に携わっております。

今回は第37回目の学術大会が、11月23日木曜祭日に東京の学術総合センターにて開催の運びとなりました。今回の大会会長は滋賀医科大学耳鼻科の神崎英明先生にお願いし、コロナ禍をはさんで4年ぶりに集会型で開催されました。同先生は埼玉医科大学が大学のポリシーとして提携して目指しております米国メイヨ・クリニック医科大学への留学経験をお持ちで、当センター総合診療内科の小林威仁准教授が公私ともどもお世話になった先生でもありました。現在は好酸球のみならず、アレルギー疾患の原因療法である、アレルゲン免疫療法のメカニズムについても研究成果を挙げられているアクティヴな研究者です。

本研究会の案内スライド


開会の挨拶をされる滋賀医科大学・神崎英明会長

本研究会は当初は好酸球そのものの研究にフォーカスをあてて始まりましたが、現在では好酸球を中心とした、広くアレルギー反応によって生じる炎症病態についての基礎的・臨床的研究の発表の場となっています。今回は一般演題20題、教育セミナー2題、特別講演1題、そして本研究会International adviserであって筆者の友人でもあり、アジアを代表する好酸球研究者といってよい、韓国Inje UniversityChang-Keun Kim教授にもご講演をしていただきました。会場は数年ぶりの対面式大会となったこともあって、大変に白熱した議論の場となり、活況を呈していました。


講演されるChang-Keun Kim教授(Inje University)とそのタイトルスライド

当センターからは筆者の司会にて、呼吸器内科の中込一之教授が「好酸球優位型重症喘息の治療戦略」の教育セミナー1(ランチョン)講演を担当されました。筆者が本研究会の事務連絡を兼ねて司会をさせていただきました。杣知行教授は一般演題の座長を担当されました。


教育セミナー1(ランチョン)の会場光景(筆者が座長席から“盗撮?”)

そして一般演題において、ふたりの本学卒業生、呼吸器内科の家村秀俊助教が細胞外マトリックス蛋白の一つであるテネイシンの好酸球活性化についてのご発表、また呼吸器内科に国内留学されていてこの秋にご所属の山梨大学呼吸器内科に帰局された星野佑貴先生が、新規炎症性サイトカインであるIL-36ファミリーの喘息における意義についてご発表をされました。


一般演題を発表する本学卒業生家村秀俊助教(呼吸器内科)


一般演題を発表する本学卒業生星野佑貴先生(現・山梨医科大学呼吸器内科)

教育セミナー2では、以前、所沢市の防衛医大にご在籍中に本学での勉強会にしばしばおいでくださっていた現・慶應義塾大学呼吸器内科講師の宮田純先生が、好酸球細胞生物学の多量オミクス解析を駆使した先端的解析について、膨大な新規情報とともに素晴らしいお話を聞かせてくださいました。四半世紀ほど前には筆者が本研究会で最も活躍し牽引していた?(自称?)時代もあったと思いますが、現在の研究技術の飛躍的な進展と、そして同先生のような若い優れた研究者の登場に、本研究会も今後の未来への展望の道筋が見えた思いでありました。冒頭では現在の出席者の中では筆者を含めた数名しかいなかったはずの第1回本研究会と、発起人であられた筆者の恩師でもある故・牧野荘平先生にも触れて下さり、天国の牧野先生も喜ばれていたことと思いました。

特別講演では徳島大学先端酵素学研究所の木戸博教授が、IgE抗体測定システムの新機軸である、アレルゲン結合親和性抗体価(Binding-Avidity)について、臨床医である我々にも非常にわかりやすいお話をしてくださいました。特に当センターの重要な研究テーマでもあるアレルゲン免疫療法において、その作用機序として、アレルゲン結合能が低親和性のIgE抗体の産生亢進という新規の情報をご紹介いただき、感銘を受けた次第でありました。

さてこの研究会では、若手の医師・研究者の研究マインドを涵養し、奨励したいという思いから、40歳以下の演者の中から“Young investigator award”とした優秀賞を選出して表彰することとしています。今回は7名の若い先生がたに受賞していただき、神崎会長と代表幹事(筆者)からの賞状と、副賞の記念品を受け取っていただくこととなりました。

受賞者のみなさまと神崎会長(右端)、代表幹事の筆者(左端)

本研究会は現地参加が約80名あり、今どきの医師主導型研究会としてはかなりの盛会となりました。成功裏に終わりましたことを、学会長をお努めくださった神崎先生、そして活発にご参加くださった会員のみなさまにも祝意と感謝を申し上げする次第であります。また休日を潰して、受付けやクローク、ウグイス嬢等々で、裏方として4年ぶりの対面式研究会の運営を支えてくれた当呼吸器内科の若い教室員たちにも感謝したいとおもいます。この研究会が日本のそしてアジアのアレルギー疾患研究の向上に役立ち、ひいてはアレルギー診療の進歩への一助となっていってくれればと願います。


休日にも拘らず本研究会の運営を裏方として支えてくれた呼吸器内科教室員たち

なお来年度の本研究会は、2024月12月21日(土曜)に秋田大学臨床検査医学の植木重治教授を学会長として同じ会場にて開催予定です。アレルギー領域に関与される先生方はもちろん、ご関心のある研究者みなさまにご参加いただけますなら幸いです。
(文責 永田 真)

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