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2023年10月26日 第72回アレルギーフォーラムが開催されました。

2023年1016日夕方、第72回アレルギーフォーラムが現地とWebのハイブリッド形式にて開催されました。アトピー性皮膚炎は、この数年で病態解明が進むとともに、さまざまな新規薬剤が登場し、アトピー性皮膚炎の診療は新しい時代を迎えています。そこで、今回は、富山大学医学部皮膚科学講座准教授の牧野輝彦先生に、「アトピー性皮膚炎の病態・診断と新しい治療」というタイトルで、埼玉医科大学第3講堂にてご講演をいただきました。

まず、アトピー性皮膚炎の疫学について、有症率は乳児期から小児期に多いものの、成人期でも少なくないこと、そして、学童期から20-30歳代は重症例が多く、人生の中で重要な時期における治療の大切さについてお話しされました。

次に、病態として、皮膚バリア、アレルギー炎症、かゆみの3つの要素が関わり合っていること、また、病態の中心はTh2型のアレルギー反応であり、Th2細胞から産生されるサイトカインであるIL-4IL-13IL-31がアレルギー炎症や痒みにおいて重要な役割を果たしていることがわかってきたようです。さらに、アトピー性皮膚炎では、皮膚のバリア機能を保つために必要なたんぱく質であるフィラグリンの低下が報告されていますが、牧野先生ご自身のご研究の成果として、皮膚の三次元培養を用いた実験において、フィラグリン合成がIL-4IL-13によって抑制されることをご紹介くださりました。今後、このような研究がさらに進むことで、より効果的で安全性の高い治療薬が登場することを予感させるお話でした。

そして、「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン」に基づき診断のポイントを解説されました。とくに、治療効果が得られなかったときの「患者教育による外用療法の適正化」、「診断と重症度の再確認」の重要性、そして、鑑別診断として、ヒゼンダニによる感染症である疥癬、皮膚リンパ腫のひとつである菌状息肉症、膠原病のひとつである皮膚筋炎などを念頭におく必要性について詳しくお話しいただきました。

最後に、新しい治療薬として、重症アトピー性皮膚炎における分子標的薬の作用機序、適応、注意点などを含めて薬剤選択の方法について、わかりやすくお話しくださりました。実際、これらの薬剤により症状もQOLも劇的に改善し、「人生が変わった」という患者さんのお話はとても心を動かされました。

このたびも、埼玉医科大学病院および関連医療機関の医師の皆様、看護師を含めたメディカルスタッフ、学生の方々にとって、有意義なアレルギーフォーラムとなったのであれば幸いです。

牧野先生には、貴重なご講演をいただきましたこと、この場をお借りして心より感謝申し上げます。

(文責:小児科 板澤寿子)

ご講演いただいた牧野輝彦先生

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