日本アレルギー学会では2018年に各地方支部が開設され、筆者(永田)が関東支部長を拝命した関係で、当センターはその関東支部の運営をお預かりしております。その主事業であるアレルギー学会関東地方会の第8回学会が、2022年12月10日(土)、秋葉原コンベンションホールをメイン会場として開催されました。学会長は昭和大学小児科の今井孝成教授でした。
開会のあいさつをされる今井孝成会長。このときだけマスクをとられました。
本学会はCOVID-19感染拡大状況への対応として、WEB参加と組み合わせたハイブリッド開催で行われ、一般演題についてもWEBでの発表が多くみられました。
プログラムは教育講演、会長企画、アレルギー診療の各領域にまたがる教育セミナーが用意され、非常に充実した内容でありました。一般演題も38を数えました。その多くは難治性あるいは希少なアレルギー疾患にかかわる貴重な症例報告であり、またアレルゲン免疫療法あるいは生物学的製剤治療にかかわるもの等で、筆者にとっても勉強になるものばかりでありました。年末の多忙な時期でかつコロナ“第8波到来”のきびしい状況であるにもかかわらず、WEB参加をふくめて有料参加者だけで225名が参加されました。このほか研修医や看護師などのメディカルスタッフは無料で自由参加としており、時宜を考慮すれば大変な盛会といってよい活況を呈しておりました。
発表される石井玲奈先生
当センターでは呼吸器内科の石井玲奈先生が、コロナワクチンの注射を反復しているうちに抗IL-4受容体α抗体デュピルマブによる皮膚反応が生じるようになった貴重な症例報告をされました。コロナワクチン自体でのアレルギーは100万回に数回といわれるように極めてまれなのですが、含有されるPEG(ポリエチレングリコール)の反応であることが指摘されています。このPEGはデュピルマブに含有されるPS(ポリソルベイト)と交差反応をすることから、このような事態が生じたものと推察されました。しかしワクチン自体では問題は生じてはおらず、コロナワクチンの安全性が改めて確認されたケースともおもわれました。
講演をされる中込一之先生
呼吸器内科の中込一之准教授は本学会の事務局長も務められ多忙ななか、教育セミナーにおいて抗IgE抗体の重症喘息における意義について講演されました。基本的に通年性の環境アレルゲンに感作されたアトピー型喘息にもちいられますが、低肺機能者で有効性が高いこと、ウイルス感染に立ち向かうインターフェロンの産生を回復させること、実際にウイルス感染によって生じる喘息増悪を防ぐ効果に優れていることなどをお話されました。
講演をされる杣先生
呼吸器内科・予防医学センター教授の杣(そま)知行先生は別の教育セミナーで、喘息の高齢化に伴う気道炎症の病態の変化について講演されました。喘息は通常は好酸球性炎症を示すものですが高齢者気道では好中球性炎症もみられること、好酸球性炎症も増強しがちなこと、これらの顆粒球(白血球)が複雑な混合顆粒球型の炎症病態を形成して患者さんを苦しめていることなどを解説されていました。
そのほか小児科の板澤寿子准教授は一般演題の座長を担当され、また教育セミナーなどを含めて各会場においてきわめて活発に質問等をしてディスカッションをされ、学会をたいへんに盛り上げてくれていました。
なお筆者自身は朝に開かれた役員会、午後の教育セミナー、そしてトリの海老澤元宏アレルギー学会理事長(相模原病院小児科)による特別講演、の司会を担当させていただきました。
多難な時期であったにもかかわらず成功裏に終えられましたことを、今井会長には心からの感謝と祝福を申し上げます。またご参加の先生がた、また後援企業さまにも感謝を申し上げます。なお第9回の本学会は2023年7月10日土曜日に、帝京大学呼吸器アレルギー内科山口正雄教授を会長といたしまして、今回と同様の秋葉原コンベンションとWEBでのハイブリッド様式にて開催の予定であります。
関東地区にて広くアレルギーの臨床にご関心をおもちの先生がた、看護師さんなどのメディカル・スタッフ、そして医学生などのご参加・ご聴講をお待ちいたしております。(文責 永田真)