毎年多くの日本人を悩ませるスギ花粉症の時期が近づいて参りました。今年のスギ花粉飛散量は例年と比べて非常に多く前年の2倍以上と予測されております。2月中旬に飛び始めるとの予想です。スギ花粉症の有病率は年々上昇し、最新のデータでは日本人の38.8%となっており、まさに国民病と言えます。今年も早めの治療開始をお勧めします。特に埼玉医大周辺のスギ花粉の飛散は悲惨な状況と言われています。
治療の中心は飲み薬や点鼻薬になります。症状が出る前から使用することで本格飛散期の症状が和らぐと言われています。またアレルゲン免疫療法というアレルギー体質自体を治す治療も出てきています。当センターでも承っていますし、お近くでも、アレルギー専門医や耳鼻咽喉科などでご相談ください。(ちなみに、スギ花粉飛散期にスギ舌下免疫療法の新規導入はできません。)
飲み薬や点鼻薬を使っても症状が良くならない人には手術治療もあります。大きく分けて、鼻づまりを改善させる「下鼻甲介手術」と、くしゃみ・鼻水を抑制する「後鼻神経切断術」に分けられます。花粉症を含めたアレルギー性鼻炎ではアレルギー反応により下鼻甲介が腫れて鼻を狭くしてしまいます。その結果、鼻づまりが起こります。アレルギー反応は自律神経を介してくしゃみや鼻水を引き起こします。下鼻甲介手術では腫れた下鼻甲介の粘膜下組織を脂肪吸引のように減量し鼻を広くします。後鼻神経切断術はアレルギー反応により狂った自律神経を一部切断することでくしゃみ、鼻水の反射を抑制します。どちらもとても良い効果が期待できますので、飲み薬や点鼻薬で症状が良くならない方はご検討ください。しかし手術には合併症の注意も必要です。下鼻甲介手術において、下鼻甲介を減量しすぎることで生じるempty nose syndromeという病気があります。鼻づまりを治すために手術をしたのに、手術後も鼻づまりが治らないどころか強い乾燥感や呼吸の苦しさを呈する病気です。まだまだ不明な点も多い病気ですが、当センターではこのempty nose syndromeの発生に注意するだけでなく、empty nose syndromeに対する新しい改善手術を開発しております。
花粉症は大人だけでなく子供にも増えています。幼い頃から鼻呼吸ができないことで顔面形態の発達が抑制されてしまうという報告もありますので、お子さんも積極的な治療をお勧めします。
埼玉医大アレルギーセンターでは呼吸器内科、総合診療内科、皮膚科、小児科、耳鼻咽喉科で協力し花粉症に対しても総合的な治療を提供致します。
文責 耳鼻咽喉科 細川 悠