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2022年10月7日~9日 第71回日本アレルギー学会学術大会が開催されました。

昨年の第70回日本アレルギー学会では永田センター長を学会長として、パシフィコ横浜をメイン会場として、当センターが開催の担当をいたしました、あれから早や1年。10月7日から10月9日の3日間、東京国際フォーラムにて第71回日本アレルギー学会学術大会が開催されました。新型コロナウイルス感染症の流行状況を鑑みて、今回の学術大会も昨年私達が主催させていただいた第70回大会と同様に、現地発表とWEB発表(ライブ・オンデマンド)のハイブリット開催となりました。開催初日は終日肌寒く雨模様の天気ではありましたが、多くの方が実際に現地へ足を運び精力的に学会参加をされておりました。



会場エントランス付近

企業展示ではアストラゼネカ社において当科永田センター長監修の「はたらく細胞 ぜん息特別編」の漫画の配布をされておりました。そのほか近日同社より発売される抗TSLP抗体であるテゼペルマブの臨床試験結果の展示もあり、今後複数バイオマーカーの上昇が認められる方や、その他血中好酸球数が少ない喘息患者さんの治療選択薬の一つとして期待できる内容でありました。


企業展示の様子

大会初日にはミニシンポジウムにおいて、呼吸器内科の星野助教より、当院通院中の喘息患者さんにおけるIL-36 familyに関する検討が発表されました。IL-36 familyはアレルギー性鼻炎や慢性副鼻腔炎などで上昇することが報告されているバイオマーカーであり、喘息における病態への影響は未知数です。今回は特に喘息患者さんの喀痰中のIL-36a濃度が健常人と比較して高値であることが報告されました。


発表する星野助教

またポスター発表では、当院小児科OBである植田医師よりダニ刺激による好酸球と好中球の活性化に関する検討が報告されました。植田先生は呼吸器内科研究室で好酸球の基礎実験に関する業績を多数お持ちであり、筆者(片山)も直接研究指導を賜わった先生です。喘息では好酸球の他に好中球も病態に関与していることが報告されていますが、今回の植田先生の報告では、ダニによって両細胞ともに活性酸素を産生する報告でした。なお永田センター長は「アレルゲン免疫療法手引書」の解説の教育講演を担当しました。


発表する植田先生

10月8日(土曜日)、アレルギー学会2日目は前日の雨は止み、会場来場者も多くの方が参加されておりました。午前はシンポジウム13「non-type2炎症の病態解明」に杣知行先生が演者として登壇され、永田センター長はシンポジウム14「ウィルス感染の影響を再考する」の司会をされました。


講演する杣知行先生

シンポジウム13では杣先生が喘息における好中球性炎症の役割をテーマに登壇されました。当院データをもとに重症喘息における喀痰細胞分布、喀痰中ATPが好中球+好酸球比率と相関すること、重症喘息においては好中球が未刺激でも好酸球を遊走させることなどを報告しました。最後にシンポジウムの演者の皆様と一緒にnon-type2の定義についてディスカッションをされました。演者の皆様がnon-type2ではなくT2 Low、Low Type2など言った方が良いのではないかと活発な意見が交わされました。

  
左から宇野助教、片山助教の発表終了後にポスター前で

午後のポスターセッション12では宇野達彦助教と片山和紀がそれぞれ発表されました。宇野先生は「FeNO及び末梢血好酸球数で分類した重症喘息サブタイプの後方視的観察研究」をテーマに発表されました。宇野先生は今回がアレルギー学会での初めての発表であり事前に念入りに準備をされておりました。発表直前も緊張をしており、入念に原稿を読み直していました。日常診療と同じようにひたむきに努力する姿に大変感銘しました。片山は「当院における重症喘息患者の好酸球性気道炎症判断基準の検討」をテーマに発表しました。喘息において生物学的製剤が多数使われるこの世の中で、改めて喀痰好酸球基準をどうするかというテーマで質疑応答にも答えておりました。

 
日本アレルギー学会 70周年記念シンポジウムで講演する永田真センター長

午後のセッションでは永田真センター長が特別企画の日本アレルギー学会 70周年記念シンポジウム「専門医制度のこれまでとこれからーTotal allergistを目指す事の重症性―」をテーマに講演されました。近年では当院のアレルギーセンターでもアレルギー電話相談を受けますがここ最近は食物アレルギーの相談が多く、当院での喘息・咳喘息における食物アレルギーの合併率などを含め、また日米のアレルギー専門医の特性や守備範囲などについてお話し頂きました。永田先生はご自身の今までの経験や活動を元に、患者さんを中心としたアレルギー病態に対して臓器横断・包括的な管理・治療ができる“Total allergist”の育成が大切であるという強いメッセージを発信されました。

そのほか、呼吸器内科の中込准教授はシンポジウムと教育(ランチョン)セミナーで講演をされ、小児科の古賀講師と呼吸器内科の内田貴裕助教がミニシンポジウムで、小児科の岡田助教や呼吸器内科の石井玲奈助教はポスター発表を行いました。


発表する石井玲奈助教

本学会の随所において、埼玉医科大学病院アレルギーセンターが大きな貢献ができたものと考えております。今後のアレルギー診療の進歩のためにも、当センターの関連各科が力を合わせて、さらに前進して参りたいと存じます、(文責呼吸器内科 片山和紀、星野佑貴)

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