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第68回 アレルギーフォーラムが開催されました。

 9月8日木曜夕方、第68回アレルギーフォーラムが開催されました。前回と同様に本学の講堂での現地開催とオンラインとのハイブリッド開催でしたが、このたびは久々に講師の先生に当院講堂まで直接お越しいただき、大変活気のある会となりました。今回の講演は、国立三重病院臨床研究部長の長尾みづほ先生から「小児喘息治療の治療戦略」というご演題でご講演いただきました。
 冒頭では、喘息の治療薬が十分ではなかった時代の三重病院での施設療法(水被り・運動療法<縄跳び1000回?>・腹式呼吸)をご紹介いただき、その後、生物学的製剤を含めた最新の治療についてご解説いただき、1時間の講演の中で数十年分の喘息治療の歴史を振り返る、という内容でした。
 吸入ステロイドは、現在のガイドラインでは「早期から導入して適切に使用する」ことが示されておりますが、かつては、「最後の手段」「伝家の宝刀」というような位置づけであったことは若い先生方にとってきっとセンセーショナルだったのではないかと思いました。また、小児期に喘息と診断された方を成人期まで追ってみると、重症の人ほど寛解・治癒には至っておらず、入院期間も長期に渡り、呼吸機能においても、治った人と比べると結果が悪いということもお話いただきました。現在の小児喘息の治療に従事する者として、今の治療が現在だけでなく将来的な患者予後も自分たちの治療方法で変わってしまうのだと、身の引き締まるような内容でした。
 ガイドラインが整備され、治療薬も進歩した中で、難治の喘息患者への対応についても興味深いお話が聞けました。三重病院の慢性疾患病棟に入院しているアレルギー疾患のお子さんたちの様相も変わってきているとのことでした。入院がきっかけとなった疾患の根底に、発達障害や家庭での環境などが背景にあるとのも少なくなく、喘息治療とともに発達障害の対応も同時に行う必要があるそうです。服薬アドヒアランスだけでなく日常生活のリズムを正常化することは、喘息の状態だけでなく、アトピー性皮膚炎の改善にも影響を与えた症例のお話は大変興味深い内容でした。
 小児科から成人内科への移行期をどのように対応するかについてもお話いただきました。治療の主体として、小児科は保護者を主体に説明しますが、思春期・青年期は本人主体となります。この前段階として、小学校高学年ころから診療において本人に主体性を持たせる必要性は日常診療でもしばしば感じるところがあると気づかされました。
 以上、自施設での治療の変遷から苦慮された症例提示等を踏まえて、様々な観点から喘息治療についてご教授いただきました。この度、素晴らしいご講演を賜りました長尾みづほ先生に、この場をお借りして感謝申し上げます。(文責:小児科 盛田英司)

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