筆者(永田)は2018年に創設されました日本アレルギー学会初代の関東支部長を拝命いたして現在に至っております。関東支部の主事業であるアレルギー学会関東地方会の第6回学会が、2021年11月27日(土)、秋葉原コンベンションホールをメイン会場としてWEBとのハイブリッドにて開催されました。アレルギー関東地方会は筆者の考えで関連全科に会長さんを担当して頂いてきました。第1回筆者(内科)→小児科→皮膚科→耳鼻科→眼科ときて今回は基礎医学から!山梨大学免疫学の中尾篤人教授に会長をお願いしました! それぞれのお立場での独自カラーを出して頂くようお願いしていますが中尾会長は会員のサイエンスマインドを涵養したいということを仰っておられました。
当日朝、中尾会長と筆者。マスクは一瞬はずしたのみで会話はその間ナシです念のため~。
なんとなくかわいいプログラムジャケット
開会のご挨拶をされる中尾会長
40を超える一般演題があり盛況でしたが、特に会長企画シンポジウムでは3名の基礎の先生方からアレルギー診療の前進に向けての新しい取り組みのお話をきかせていただいて、圧巻でありました。そのおひとり、モジュラス株式会社寺田先生は、スーパーコンピュータを用い、約五億個の標的構造をバーチャルスクリーニングしてなどの創薬への挑戦をお話しくださいました。その結果、IgE依存性アレルギー反応の立役者であるマスト細胞の増殖を抑える化合物の発見に成功されたというのです!アレルギーの新規治療となる可能性があり特に高額で定期的注射も要する抗IgE抗体治療などにとって代わっていくかもしれず、大いに期待が持てるアプローチのように思われました。鳥居薬品の女性研究者土井先生はわれわれ埼玉医大アレルギーセンターとも仕事仲間ですが、スギ花粉のアレルゲンはヒノキと80%の相同性があることなどをお話しされ、スギ舌下免疫療法で、ヒノキ花粉症も多くの患者では症状軽減が得られることなどをお話しされていました。3番目の演者は中尾会長ご自身だったのですが、残念ながら筆者は教育セミナーの打ち合わせのために拝聴することができませんでした。同先生はアレルギー反応にかかわるマスト細胞などが“体内時計”をもっておられることを突き止められており、関連のマスト細胞攻略戦略についての内容が含まれていたものと推察いたします。
教育セミナーの司会をつとめる筆者
教育セミナーが4本設けられ、筆者は “重症アレルギー性疾患におけるType2炎症”の司会を担当させていただきました。関東を代表する皮膚科・耳鼻科・内科の演者から、重症アトピー性皮膚炎、難病指定のある好酸球性副鼻腔炎、そして呼気NOやIgE値が高値を示すいわゆる重症“Type2”喘息において、それぞれ代表的なType2サイトカインであるIL-4と、同一の受容体を共有して類似の作用を発揮するIL-13が各々病態に濃厚に関与すること、また抗IL-4受容体α抗体が良好な治療活性を示すことなどをご講演いただきました。
本学会はCOVID-19感染拡大状況への対応として、WEB参加と組み合せたハイブリッド開催で行われ一般演題についてもWEBでの発表が多くみられました。当センターからは今回、筆者、呼吸器内科の杣准教授と中込准教授(座長)および石井助教(発表)、皮膚科の宮野講師(座長)、小児科の清水助教(発表)が参加いたしました。
司会をされる中込准教授(左)。右は帝京大学山口教授。
埼玉医大の医局からWEBで発表する石井助教
会長企画、教育セミナーと一般演題以外にも、プログラムはアレルギー診療の各領域にまたがる3つの教育講演(小児喘息、花粉症、過敏性肺炎)も用意され、非常に充実した内容でありました。そしてこういった状況であるにもかかわらず、WEB参加をふくめて約200名が参加され、時宜大変な盛会といってよい活況でした。
本学会では筆者の考案でこの領域の未来を担う若手・中堅の学問的意欲の鼓舞を目的に、一般演題の各セッションの中から「日本アレルギー学会関東地方会優秀賞」を設立して、閉会式の際に副賞を添えて表彰しています。そのひとりは慶應大学のまだ研修医?医学生さん?らしきワカモノが受賞されていて喜ばれていました。
本学会が成功裏に終えられましたことを、中尾会長には心からの祝福を申し上げますとともに、ご参加の先生がた、また後援企業さまに感謝を申し上げます。なお第7回の本学会は2022年3月12日土曜日に、筑波大学呼吸器内科檜澤伸之教授を会長といたしまして、今回と同様の秋葉原コンベンションとWEBでのハイブリッド様式にて開催の予定であります。関東地区にてご研鑽中の、学会員みなさまはもちろんのこと、広くアレルギーの臨床にご関心をおもちの先生がた、看護師さんなどのメディカル・スタッフ、そして医学生などのご参加・ご聴講をお待ちいたしております。(文責 永田真)