第70回日本アレルギー学会学術大会が当アレルギーセンター長で呼吸器内科教授の永田真先生を会長として、10月8日から10日までパシフィコ横浜ノース及びwebのハイブリッド形式にて開催されました。
本学関係者だけでなくお祝いの言葉が多数寄せられました。本学会の事務局はアレルギーセンターの呼吸器内科が主に担当し、事務局長は杣知行准教授であり、宮内幸子助教、星野佑貴助教、片山和紀助教などの協力とコンベンションで、2年前より準備してきました。我々は学会開催前からツイッターを始めており、東京慈恵会医科大学葛飾医療センター小児科の堀向健太先生のアドバイスのもと、永田先生がツイッターの中の人として、学会の見どころなどを多数つぶやき、魂のつぶやきとして注目を浴びてもいました。新型コロナ感染症については、9月に入ってから患者数が劇的に減少しており、奇跡的に全国で緊急事態宣言が解除され、会場参加人数が増えることが期待されました。
前夜の開会セレモニーには本学丸木清之理事長ならびに篠塚望病院長もご臨席下さいました。同セレモニーでは、二十六世観世宗家 観世清和様、観世三郎太様による演能が行われました。通常学会のセレモニーなどではありえないことですが、永田会長のご一家とのご縁があって実現いたしました。敦盛と高砂を拝見しましたが、空気がピンと張り、高いレベルの気合やパワーを放っているものであり、コロナ禍の邪気を払っていただいたと思いました。我々にもパワーを注入していただいたと思います。
10/8(金)は大会初日で、第一会場の開会式からスタートしました。永田先生から、埼玉医科大学のポリシーである患者中心的医療の、アレルギー診療における実現を目指しての今回の学会のテーマ「Patient–centered medicineとallergy scienceの結晶化」について説明がありました。この会場は非常に広く、米国など海外のコンベンションセンターに雰囲気がとても似ていて、これから学会が始まるという高揚感を感じることができました。
続いて会長企画シンポジウム「Patient-centered medicine のためのアレルゲン免疫療法~Natural courseを変えるために」が行われました。一般にアレルギー疾患に処方される薬は対症療法薬で、薬を内服している間は良いが、やめてしまうと元に戻ってしまうことが多いのが残念なところです。一方でアレルゲン免疫療法は、特にアレルギー疾患の自然経過を変える可能性が指摘されています。我々も特にアレルゲン免疫療法を重視しており、治療の普及及び機序の解明に努めてきています。本シンポジウムでは、小児科、耳鼻科、内科の日本のエキスパートからの講演が組まれました。学会テーマに準ずる内容で、永田先生座長の元、私は喘息におけるアレルゲン免疫療法について発表をいたしました。
続いて会長講演「Patient-oriented Allergy Science, Patient-centered Allergy Practice」が行われました。
自身の幼少期の複数のアレルギー疾患の経験、アレルゲン免疫療法の研究、アレルギー疾患の重要なeffector細胞である好酸球の研究、アレルギー学会における専門医制度の立ち上げなどの話を介して、アレルギー研究は患者さんに向くべきで、アレルギー診療は患者中心であるべきだという講演でした。アレルゲン免疫療法は、永田先生が作成を指導され、当日公表された「喘息予防・管理ガイドライン2021」で、喘息における追加治療として記載されたことが報告されました。参加人数も多く「とても素晴らしかった」とのコメントが多かったです。なお永田会長は若い日のアイスホッケー部活の写真を出され、“わたしはどれでしょう”とクイズを出していましたがなかなか難しく、それについては「ひげに騙された」とのコメントもありました。
シンポジウム「生活環境汚染とアレルギー」では当センター小児科板澤寿子先生の黄砂とアレルギーについての講演がありました。またミニシンポジウム「気管支喘息・基礎的な視点で臨床を考える」では呼吸器内科・内田義孝先生と、東京大学から呼吸器内科の研究室にご留学していただいている清水先生の好中球性炎症に関する発表がありましたが、とてもレベルの高いシンポジウムでした。他のミニシンポジウムでは小児科・植田穣先生の好酸球活性化に関する発表もありました。午後は呼吸器内科・片山先生と星野先生の喘息患者の気道炎症に関する発表がありました。
今回はコロナ禍で参加者数が見込めないとの懸念があり、特に企業展示に参加者を動員するための案を考えました。企業展示をまわることでゲットできるスタンプラリー(商品は学会ロゴがはいったUSB)や、企業プレゼンテーション会場を作ったことなどです。実際には緊急事態宣言も明け、参加人数も予想よりはるかに多く、企業展示も盛況でありました。
10/9(土)は大会2日目です。シンポジウム「包括的アレルギー診療へのアプローチ」では、永田先生の埼玉医大アレルギーセンターに関する講演、シンポジウム「免疫系と神経系のクロストーク」では本学免疫学・松下祥教授の座長の元、免疫学川野先生のドーパミンに関する講演がありました。ミニシンポジウムでは呼吸器内科宮内先生と家村先生の好酸球活性化に関する発表がありました。現在は他大学にも多数のアレルギーセンターが作られてきていますが、埼玉医大アレルギーセンターは、日本で最初に開設された我が国のパイオニア的アレルギーセンターで、各科が力を合わせあって診療や教育あるいは研究に取り組んでいるのが特徴です。今回もそういった診療科・基本学科の垣根を越えての活動が実り、当センター勢はトータル19の演題を発表する大活躍ぶりでした。
10/10(日)は大会3日目です。会長企画シンポジウム「好酸球の最前線~重症好酸球性疾患の制御に向けて~」では、永田先生座長の元、総合診療内科小林先生の好酸球性炎症の調節機構についての講演、シンポジウム「重症アレルギー疾患の病態解明と治療の進歩」では、呼吸器内科杣先生の重症喘息における好中球性炎症についての講演、シンポジウム「感染と気道アレルギー Up-to-date」では、私の、感染関連分子による炎症細胞反応の修飾についての講演がありました。好酸球研究も埼玉医大の特徴で、本学会の一般演題でも多数発表していますが、我々はアレルギー好酸球研究会も主催しており、我が国における代表的施設となっています。
閉会式では、永田先生の「オーラの泉」的な話(コロナ禍は大丈夫なのよとお告げがあったそうです)と、アレルギー学会会員を含む皆さまへの感謝の言葉でクロージングとなりました。参加人数はweb・現地を含めて6000名規模と大いに盛り上がりました。のちに約1か月間のWEB開催があるため、参加者はさらに増加すると思います。終わった後はアレルギーセンター一同で記念写真を撮影しました。通常はこの後に打ち上げを行うことが多いのですが、今年はコロナ禍の状況であり、そのまま品行方正に現地解散としました。
なお、今回は31名の著明な海外演者をお招きしたのですが、コロナ禍にて来日はかなわずWEBでのご参加となりました。永田先生の恩師、ウイスコンシン大学のWilliam W. Busse先生の最終講演「Novel Approaches for Treatment of Severe Allergic Diseases」はとても盛況でした。私は個人的には恩師James E Gern先生と韓国の仲間Chang-Keun Kim先生の話を楽しみにしており、実際に講演を楽しみ、会場で質問させていただきました。その他、我々が聴講したいと考えたプログラムが多数採用されており、オンデマンドで見るのが楽しみです。会長講演、シンポジウム、一般演題などだけでなく、開会セレモニーでの演能も、オンデマンドで11月18日まで聴講できますので、皆様も楽しまれていただければと思います。尚研修医と学生はWEBオンデマンド参加は無料です。
(文責:呼吸器内科・中込一之)