埼玉県のアレルギー疾患拠点病院に指定された埼玉医科大学病院と、埼玉県疾病対策課との共催で上記の研修会が10月29日に埼玉教育会館で開催されました。本研修会は拠点病院化に伴って本年度から開始された埼玉県アレルギー疾患対策事業の1つです。行政担当者、特に子どもたちの育児や食事指導に直接関係する保健師さんや栄養士さんを対象に、アレルギー疾患の最新の知識の習得のみならず、アレルギーを持つ子どもたちとそのご家族の方たちのニーズに対応できるスキルも身に着けてもらおうという趣旨で企画されました。第1回の今回は、乳幼児のアトピー性皮膚炎と食物アレルギーにスポットを当て、講演と実習の2本立ての構成で開催されました。
第1部は、“赤ちゃんのアレルギー疾患~アトピー性皮膚炎のスキンケアと食物アレルギー~”というタイトルで、小生が講演しました。赤ちゃんのアレルギー、特に食物アレルギーの特徴や、血液検査の結果の解釈で注意しなければいけない点などを講演しました。また、食物アレルギー発症に関して最近のトピックスである、 “経皮感作”の考え方についても触れました。経皮感作とは、赤ちゃんの皮膚を通して食物アレルゲンが体内に吸収され、食物アレルギーに関係する免疫物質である、IgEが産生されやすくなるというものです。このためアトピー性皮膚炎など皮膚のバリア機能が低下している場合は食物アレルギーが発症しやすくなるという考え方です。スキンケアはアトピー性皮膚炎の治療・予防のみならず、食物アレルギーの発症予防の上でも重要と考えられるようになっています。
第2部は、埼玉医科大学病院あるいは同総合医療センター所属の小児アレルギーエデュケーター(PAE: pediatric allergy educator)4名によるスキンケアについての講演と実習でした。まず、当院PAE看護師の大塚砂織さんによる、“アトピー性皮膚炎、スキンケアの実際~アワアワピカピカで目指せ!ツルツル!”と題する講演がありました。外用薬を塗るときは皮膚を伸ばしながら塗らないと薬が患部まで行きわたらないという話など普段聞く機会のない内容が多く、まさに“目からウロコ”の講演内容でした。その後、実習開始です。参加者が4つの小グループに分かれ、それぞれPAEが1名ずつついて泡立て指導が始まりました。PAEの方たちが、いろいろな石鹸を用いて見事に泡立てを行い、参 加者一人一人がそれを真似て悪戦苦 闘しながらも楽しそうに泡立てに挑戦され、実習終わりのころには皆さん立派な泡を立てられていました。手取り足取りのスキンケア指導で、後日の実施アンケートで、参加者から、“ここまで具体的な研修を受けたことがなかったため、非常に参考になりました。”“泡立ての実習で、原液とよく泡立てた泡だとこんなにも洗浄力が違うということがよくわかりました。また、手のしっしんがよくならないのは、グーパーで洗えばよいということが分かりました”、などの感想をいただきました。
赤ちゃんのアレルギーで悩んでおられるご家族をサポートする上で、このような研修の大切さを実感し、今後も定期的にこのような会を継続していく必要を感じた次第です。(文責 徳山研一)