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第50回アレルギーフォーラムが開催されました。

 2017年6月22日夕刻に、本学本院キャンパス第4講堂にて第50回アレルギーフォーラムが開催されました。梅雨のじめじめした空気とは裏腹に、大多数のみなさまにご参加いただき熱気あふれる勉強会となりました。
 特別講演は、慶應義塾大学医学部呼吸器内科専任講師の福永興壱先生より「重症喘息について臨床・基礎から考える」というテーマで御講演を賜りました。
 まず、本邦の気管支喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)の潜在患者数はそれぞれ約800万人、約530万人ととても多いものの、医療機関で実際に治療を受けている患者数は少ないと考えられるという現状についてお話しいただきました。広く知られている通り、吸入ステロイド療法のガイドラインによる提唱と普及に伴い、気管支喘息患者の救急受診は減少していますが、それでも多くの方が、苦しい思いをしていらっしゃるにもかかわらず、医療機関を受診されていないという事実に大変驚きました。また、実際に気管支喘息の診断が正しいものかどうかを常に念頭に置く必要があるということを、実例をもとにお話しされていました。また、気管支喘息患者のなかの約1/3の方が、症状が改善したのちに吸入ステロイドを中止してしまうとのことで、これは実際臨床の現場で患者さんにうまく説明が行き届いていないということを示唆するもので、ひとりの呼吸器内科医として筆者も責任を感じました。ついで重症喘息についての研究のなかで御高名なKeio-SARP(Severe Asthma Research Program)についてご説明いただきました。もともと、気管支喘息という病気はさまざまなフェノタイプがあり、そのフェノタイプ別で治療を考えていくというオーダーメイド治療をしていこうという見解があり、当アレルギーセンターなどで積極的に行っているアレルゲン免疫療法もその一端であります。そのフェノタイプを考えるうえで重症喘息患者を色々な臨床像から分類するという欧米のSARP研究があり、それをもとに慶應義塾大学グループで行っている御研究です。またAERD(Aspirin-excerbated respiratory disease)について、そして好酸球性副鼻腔炎の患者の鼻茸中の好酸球を用いた網羅的脂質解析を行い、局在における脂質メディエーター産生のパターンに多様性があるのではないかというお話をされました。脂質メディエーターのなかでもプロテクチンD1という好酸球で産生される物質に着目されており、これは抗炎症作用を有しますが、重症喘息患者の好酸球はプロテクチンD1をはじめとする15-LOX products産生が減弱していると思われるとのことでした。そしてアレルギー疾患の近年のトピックスである抗体製剤についてのお話があり、最後のtake home messageとして、症状が残っていることをきちんと医師に伝えられる患者は全体の16%しかいないというAWARE studyについてご説明いただき、患者さんから情報を引き出すことの難しさや大切さを痛感させていただきました。
 慶應義塾大学医学部においてBest Teacher Awardを受賞された福永先生ならではの、基礎研究のお話がありつつ、若手医師や研修医にとってもとてもわかりやすく大変勉強になる御講演で、あっという間に閉会となってしまいました。素晴らしい御講演を賜った福永興壱先生へこの場をお借りして感謝を申し上げます。
(文責 呼吸器内科 宮内幸子)

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