10月22日土曜、東京都千代田区の学術総合センターにおいて「アレルギー・好酸球研究会2016」が開催されました。本研究会は好酸球を中心としたアレルギー性炎症についての全国規模学術集会であり、今回で記念すべき30回目となります。かつては製薬企業さんが主催しておりましたが現在は“民間移行”を遂げまして、私ども埼玉医科大学アレルギーセンターが事務局として運営させていただいております。一般演題を公募しての学会形式で、今回は岩手医科大学呼吸器アレルギー内科主任教授の山内公平先生を学会会長として、約100名の参加者をお迎えして開催されました。
一般演題数は過去最高の26演題を頂戴し、小規模学会のそれを凌駕するレベルに達しました。これはまさに会長山内教授の御人徳によるものとおもいます。内容的には従来からの好酸球の浸潤や活性化に関するin vitro研究をふくめ、臨床研究、あるいは動物実験での、アレルギー性炎症の成立機序あるいは治療に関する活発な研究演題が全国から寄せられました。埼玉医科大学アレルギーセンターからは、総合診療内科と呼吸器内科との共同研究で、総合診療内科の小林講師が好酸球性肺炎患者さんの気管支肺胞洗浄液の解析結果について、また野口医師がアレルギー疾患における好酸球の浸潤・活性化の新規の機序として、細胞外マトリックス蛋白であるペリオスチンの作用について報告いたしておりました。
特別プログラムとして、教育講演では東京女子医科大学呼吸器内科の玉置淳教授から「肥満と喘息との関連性」についてご講演を頂戴しました。肥満・脂肪関連の各種サイトカイン群が気道炎症に効果をおよぼしえること、治療には薬物の強化とともに減量が重要であることなどをお話いただきました。
Key Note Lectureとしまして米国のEric Bradford先生が抗IL-5モノクローナル抗体メポリツマブの重症喘息に対する治療効果について、お話をしてくださいました。ご司会は山内会長の岩手医科大学に所属される中村豊准教授が堪能な英語を披露されていました。
特別講演としまして、山内会長のご司会のもと、本研究会のコアメンバーでもあります東北医科薬科大学教授の大野勲先生が「ストレスと喘息・アレルギーとの関連性」に関連して御講演をしてくださいました。学生の試験期間中には神経脳細胞が活性化してその結果気道炎症の悪化がみられる事象などについてのレビューや、同先生のお得意のげっ歯類をもちいたストレス負荷実験での喘息反応の悪化などを鮮やかにお話くださいました。
終始活発なディスカッションが展開され、レベルの高い、充実した学術集会となりました。岩手医科大学の山内先生、中村先生をはじめ、関係した皆様には深謝いたしたいと存じます。
次年度の本研究会は千葉大学の中島裕史教授を会長として、同じ場所で2017年10月21日土曜に開催予定であります。好酸球性炎症についてのみならず、広くアレルギー性炎症の基礎あるいは臨床にご関心のある皆様のご参加をお待ちいたしております。
本研究会のHPはhttps://www.sec-information.net/eosinophils/data/announce.htmlとなります。研究会名で検索していただいても簡単にでてくるとおもいます。アレルギー研究にご関心のあるかたにはどうぞご参照いただければ幸いかと存じます。(文責:永田真)