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第44回アレルギーフォーラムが開催されました

 2016年2月18日、スギパウダーがしずかに舞い降りる毛呂山の里では「第44回アレルギーフォーラム」が開催された。今回は耳鼻咽喉科が担当させていただき、関西医科大学から小林良樹先生をお迎えした。演題名は「気道アレルギーに対するトータルケア―Airway Medicine―」である。講演について触れる前に小林先生について少しご紹介させていただきたい。小林先生は関西医科大学の耳鼻咽喉科・気道疾患部門に所属されているが、生粋の呼吸器内科医である。関西医科大学では耳鼻咽喉科の朝子先生と共同して気道アレルギー疾患の診療にあたられている。ご存じのように好酸球性副鼻腔炎と気管支喘息は上気道・下気道と部位は異なるが非常に性質が似ておりOne airway, One diseaseの代表的疾患といえる。双方をトータルにケアすることが疾患のコントロールには非常に重要なのである。個人的なことになるが、私は、以前は鼻副鼻腔を中心に診療していたが、気道疾患をトータルに学ぶことが重要と考え、現在、埼玉医科大学のアレルギーセンターにて研鑽を積んでいるが、小林先生は呼吸器内科の経験を経て副鼻腔炎を診察されていることになり、「上から下」と「下から上」と方向は違うが終着駅は同じであり何か親しみを感じる。
 さて、今回のご講演では、「どのように気道アレルギー疾患を総合的に治療していくかについて」解説していただいた。特にキュバールなどの吸入ステロイドの使用方法についてご教授いただいた。気管支喘息が合併している好酸球性副鼻腔炎症例においては、鼻副鼻腔ポリープのコントロールが困難な症例が少なからず存在する。このような症例では、吸入ステロイド薬であるキュバール®を、スペーサーを用いて口から吸入し、そして鼻から呼出すると、鼻腔にも吸入ステロイド薬が沈着しポリープの縮小効果が得られるというものである。我々も耳学問で以前から吸入ステロイド薬を鼻から呼出する方法を患者にすすめることがあったが、正直、“これは効いた”と実感できる症例を経験したことがなく、その有効性については半信半疑であった。しかし、小林先生は①吸入時にスペーサーを使用すること、②呼出時に3~4秒程度かけてゆっくり呼出すること、この2点が大事であると述べられた。ただし、時間をかけすぎると効果が減弱するので適切な呼気流量を守ることが重要とのことである(後ほど確認したところによると、パウダー製剤であるパルミコートやアズマネックスなどのタービュヘラー、ツイストへラーでは、スペーサーは使用できないが、できるだけ吸入速度を早くし粒子のエアロゾル化率を上げることによって、同様の呼出方法で効果が得られるとのこと)。その事象について流体力学を応用したコンピューターシュミレーションにて確認するなど、非常にアカデミックな内容であった。また、気管支拡張薬であるβ刺激薬は、下気道のみならず上気道においてもステロイド抵抗性を解除する働きを持つことを解説された。最後に、抗IgE抗体、抗IL-5抗体そして免疫療法を用いたトータルケアについても触れられた。これらはすべて、上・下気道双方をトータルに治療する「Airway Medicine」という考えに立脚しているという話に感銘を受けた。
 今、はるか秩父の山々から毛呂山の里まで風に運ばれ、しずかに舞い降りるスギパウダーも上の気道から入り、そして下の気道にもその魔の手をのばそうとしている。やはり、気道は鼻から肺までつながっているのである。受講された皆さんも、気道を総合的に診療することの素晴らしさを再確認できたのではないでしょうか。もし、研修医の先生方がこのコラムを読んでいたら、是非我々と一緒に診療してみませんか?埼玉医科大学アレルギーセンターで。
(文責 耳鼻咽喉科 / アレルギーセンター 上條 篤)

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