お知らせとコラム

埼玉医科大学病院アレルギーセンター > お知らせとコラム > コラム > World Allergy Congress 2015の御報告

World Allergy Congress 2015の御報告

2015年10月14日から17日の合計4日間、本邦の隣国、韓国ソウルにてWorld Allergy Congress 2015が開催されました。同国では今年初めにはMARSの流行がみられ、予定通り開催されるか心配しておりましたが、流行も終息し無事に開催されたことにまず安心した次第です。本邦でも肌寒くなってきている頃でしたので、緯度の高い韓国ではさぞ寒かろうと防寒対策をしっかりしていきましたところ、現地では天候に恵まれ、長袖では少し暑く感じるほどでした。
会場のCoexコンベンションセンターは江南区にある大変広い施設であり、WACの会場以外にもイベントが多数開催されており、参加初日は迷子になってしまいました。
筆者はあいにく日本での仕事の都合で第2日目からの参加となりましたが、第1日目には当アレルギーセンターの長である永田真教授(呼吸器内科)が『New Horizons Session』にて『Immunotherapy for Japanese Cedar Pollinosis』というタイトルでアレルゲン免疫療法についての招待講演をされました。ご講演を聴かれた日本の他大学の参加者によると、英語にも関わらずなんと会場の笑いを誘って盛り上がりをみせていたそうです。内容については本邦でようやく認可され、様々な施設で開始され始めているスギの舌下免疫療法についてのお話が中心で、まさにセッションの名にふさわしい新たな展望に期待する免疫療法についての内容であったようです。

写真1

写真2

 第2日目は朝早くから人種も様々な多くの方々がメイン会場に集まり、国際学会独特の熱気に包まれていました。アメリカのGurjit Khurana Hershey先生の『The Statewide Ohio Pediatric Asthma Repository Collaborative』というご講演ではオハイオ州での小児喘息調査について学ばさせていただき、続いて、『Viral Exacerbation of Asthma』のセッションではオーストラリア、アメリカ、トルコの先生方から喘息の急性増悪について最新の知見をご講演いただきました。特に最初の『The Mechanisms of Viral Induced Asthma Exacerbation: Lessons from Childhood Asthma Cohort』というご講演ではライノウイルスC群に感染した子供で、より多く重症な喘鳴がみられるとのお話があり当センターの中込一之先生(呼吸器内科)の研究と通じる部分がありました。次いで『Social Consequences and Evidence- Based Medicine and Immunotherapy』のセッションでは、イタリア、シンガポール、アメリカの先生方がアレルゲン免疫療法の皮下注射法と舌下法の利点・欠点などを含め免疫療法のお話をしてくださいました。やはりどちらの方が優れているという結論ではなく、さらに研究が必要であると締めておられました。
第3日目はまずアメリカのDean Metcalfe先生の『The Identification and Treatment of Patients with Monoclonal Mast Cell Disorders』にてMastocytosisについて診断基準や治療などについてのご講演を拝聴し、普段あまり目にすることがない疾患ですが大変勉強になりました。また、午前中には日本アレルギー学会によるシスターシンポジウムも開催され、千葉大学免疫学の中山俊憲先生、理化学研究所の小安重夫先生らのご講演を拝聴させていただきました。新たにTpath2細胞と定義されたIL-5を特異的に大量に産生するTh2リンパ球について、またNK細胞についての基礎的なご講演であり難しくも大変興味のある内容でありました。
午後には筆者もポスターセッションにて発表いたしました。内容は気管支喘息の喀痰中細胞成分による臨床像についてです。光栄にも本邦でも御高名な先生方に足を運んでいただき、かなり緊張しましたが、今後の研究に対するご指摘を頂戴することできました。

写真3

 喘息以外には皮膚疾患や小児分野など様々な内容で、数百題の一般演題の発表が行われていました。
第4日目は朝から本邦でご活躍の先生方が座長をお務めになられておりました。『Anaphylaxis through the Life Cycle』のセッションでは、近年日本でもアレルギー学会にてガイドラインが作成されたアナフィラキシーについての内容でした。このセッションも参加者が非常に多く、海外でも注目度の高い内容であると肌で感じることができました。幼児から妊婦や高齢者などそれぞれのアナフィラキシーについての原因や治療法についてなど臨床に直結する内容でした。午後はポスターセッションに足を運びました。前日同様、ポスターセッションも内容が多岐にわたり、非常に勉強になりました。当アレルギーセンターでは小林威仁先生(総合診療内科)も『ATP, a danger signal, activates human eosinophils via P2 purinergic receptors』というタイトルで御発表され、外国の先生方と積極的に御討論されていました。
学会にて勉学に勤しんだだけではなく、せっかくの機会ですので少しばかり観光もさせていただきました。永田先生、杣先生(呼吸器内科)とユネスコ世界文化遺産に認定されている昌徳宮に行ってきました。1405年に景福宮の離宮として建立された李氏朝鮮の宮殿であり、日本の梨本宮家から嫁ぎ、大韓帝国最後の皇太子李垠の妃となった李方子もこの宮殿で暮らしたという日本としても縁のある宮殿です。後苑という広大な庭園は普段は一般開放されておらず、ツアー時のみ立ち入ることができますが今回運良くツアーに参加でき、紅葉しかかった緑豊かな森のなか、木々に囲まれた趣のある楼閣などを眺めながらの散策は大変素晴らしかったです。また、後苑に存在する、くぐると年をとらないという言い伝えがある不老門をくぐりましたので是非ご利益を賜りたく思っています。そのあとでは韓国料理の本場のサンゲタンなどを戴き、大変美味しいおもいもさせていただきました。

写真4

 このように全体的に大変意義のある体験をさせていただきました。やはりアレルギーは新生児から高齢者までを対象に多くの疾患が存在する分野であり、まだまだ発展途上の事象も多く、全世界で研究者たちが日々研鑽を積んでいると実感されました。自分のような若輩者も少しでもその手伝いができるよう進歩していきたいと考え、帰国の途につきました。(文責 呼吸器内科宮内幸子)

トップへ戻る