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第38回アレルギーフォーラムが、開催されました。

平成26年9月18日に第38回アレルギーフォーラムが埼玉医科大学病院第4講堂にて開催されました。
 今回はまず基調講演として「こどもの咳嗽の診断と治療を考える-新規刊行されたガイドラインの読み方-」が講演されたのち、特別講演として「口腔アレルギー症候群について」が講演されるという2本立ての形式でした。
 基調講演は今回、「小児の咳嗽診療ガイドライン」(作成:日本小児呼吸器学会)が作成され、その紹介を兼ね当院小児科の植田穣先生がご講演されました。小児において咳嗽は成人と同様よく見られる症状であり、時には慢性的に持続することもあります。植田先生には慢性咳嗽の定義をはじめ、乳児期・小児期・学童期とそれぞれの年齢におけるフローチャートを用いた鑑別診断方法や治療方法をお示しいただきました。また、遷延性細菌性気管支炎という概念の確立の重要性などについてわかりやすく解説していただきました。
 次いで、メインイベントである特別講演は、藤田保健衛生大学 坂文種報徳曾病院小児科 近藤康人教授においでいただき、「口腔アレルギー症候群(oral allergy syndrome,以下OAS)」についてご講演いただきました。OASはIgE抗体を介する口腔粘膜を中心とした即時型アレルギー症状と定義されています。その原因となるのは主にフルーツや野菜であり、これらの食物を摂取すると比較的速やかに口や咽喉頭の症状が発現し、時には下痢、腹痛といった胃腸症状、咳、呼吸苦など呼吸器症状などのアナフィラキシー症状、さらにはショック症状が出現することがあります。近年国民病として増加傾向にある花粉症に伴いOASも増加していることが推測されています。実際、2001年ごろよりOASの報告が増加してきていますが、認知度はまだまだ低い疾患です。その病態や適切な治療法について分からないことの多いOASですが、近藤先生はわかりやすく説明して下さいました。食物アレルギーには「2つのタイプ」がある」こと、OASには大きく分け「3つのグループがある」こと、今後期待される治療法などについてです。
 「食物アレルギーの2つのタイプ」とは感作様式での分類となります。経口摂取により感作が成立し同一食品摂取によりアレルギー症状が誘発されるclass1allergy(一般的に知られている食物アレルギー)と花粉やラテックスといった抗原に経皮・経気道的に感作され、これらと共通抗原性を持つフルーツや野菜を経口摂取した際に交差反応性によって症状を呈するclass2 allergyです。今回のOASはclass2 allergyにあたります。
 「OASの3つのグループ」とはOAS症状を来たす3つのタンパク質コンポーネントのことです。近年アレルゲンをより細かく分解し、コンポーネント(構成タンパク質)のレベルで測定する検査(Component resolved diagnostics:CRD)が可能になり、複数のタンパク質で構成された粗アレルゲンによって行われている従来のアレルギー検査と比べより精密な診断をすることができるようになりました。多くの花粉や食物が共通に持っているコンポーネントの代表がProfilin、PR-10、Lipid trandfer protein(LTP)の3つのグループです。ProfilinやPR-10は消化耐性が低く(熱や消化酵素により分解される)ため口腔症状のみでおわることが多く、LTPは消化耐性が高い(熱や消化酵素により分解されにくい)ため、全身症状など重篤化しやすいとのことでした。また、国や地域(草や木の種類)の違い、食生活(例:果物を皮ごと食べるか食べないか、など)の違いによって、この「2つのタイプ」と「3つのグループ」の組み合わせが変化し、多彩な病態を示す興味深い疾患であるとお話しされました。
 治療に関しては、花粉症に対する皮下免疫療法や舌下免疫療法を行うことでOASの改善が期待されますが、これら治療法によるOASの改善効果については有効もしくは無効であったとする報告が両方あり一定の見解は得られていないのが現状とのことです。まだまだOASのメカニズムは十分に解明されておらず今後さらなる研究が必要と考えられる疾患と感じました。
 両講演ともその内容は我々が日常診療することの多い疾患についてであり、最近のホットな話題を平易にご解説いただき大変勉強になりました。わずか一時間半でしたが質疑応答も活発に行われ大変有意義な会となりました。 (文責:小児科 古賀健史)

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