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第26回日本アレルギー学会春季臨床大会レポート

 2014年5月9日から11日までの3日間にわたり、「アレルギー克服への新たな挑戦~研究と診療のReciprocal Interaction~」というテーマで国立京都国際会館にて第26回日本アレルギー学会春季臨床大会が開催されました。開催期間は天候にも恵まれ、庭園の新緑も美しく映えていました。これまで日本アレルギー学会学術大会は年に2回の開催でしたが、2015年から年に1回の開催になります。これに伴い、2014年も春季臨床大会のみの開催へ変更となっており、参加人数も多かったものとおもわれます。当アレルギーセンターからも教育セミナー、シンポジウムを含め、当院小児科、皮膚科、耳鼻咽喉科、呼吸器内科といった様々な診療科からの発表がありました。それら全てを拝聴するだけでも腹十二分目は間違いなしといったところですが、日本全国さらには世界中からの最新の知識、トピックスが一同に会するわけですので、若輩者の筆者からするともうどこから手を付けてよいのか、いろいろと興味はありますが全部を聞いてまわるのは体が足りない!という気持ちでありました。
 第1日目にはまず会場を一巡し、だいたいの会場の配置や自分の発表会場を確認し、興味のあるセッションをいくつか拝聴しました。『喘息の重症難治化要因』のシンポジウムでは本年の呼吸器学会でも多数取り上げられていたCOPDと気管支喘息のオーバーラップ諸侯群についてのお話がありました。65歳以上の喘息患者では4割近くがオーバーラップ症候群であるとの報告であり、確かに臨床の現場で合併例を目にすることはありましたが、そこまで多いのかと驚きを禁じえませんでした。
 第2日目には教育セミナー『喘息治療~配合剤で十分なのか?』に参加しました。このセミナーは岡山大学大学院の金廣先生と我がアレルギーセンターの長である永田先生がディベート形式に御講演くださいました。配合剤で十分であるとする立場での観点、配合剤では不十分であるとする観点からそれぞれお話しくださいました。
教育セミナーはランチョンセミナー形式で毎日5か所以上で開催されていましたが、どのセミナーも満席で熱気にあふれていました。
また、同日は舌下免疫療法講習会も開催されました。本邦では本年よりアレルギー性鼻炎に対する舌下免疫療法が開始となります。従来のSCITに比べ、簡便であることや重篤な副作用が少ないことなどから今後普及していくことが予想されますが、十分な知識を有する医師にのみ処方・使用されることが求められており、この講習を受けることが処方するための必須条件となります。今回は定員1000名で募集がありましたが、受講希望者が非常に多く、事前申し込みは申し込み開始日に終了してしまったようでした。新たな治療法に対する関心や期待度の高さを反映しているように思われます。今大会の中でも舌下免疫療法に関する発表は多くみられました。
 第3日目には自分の発表も無事に終わり、当アレルギーセンターの上條先生が座長をおつとめになったミニシンポジウム『花粉症免疫療法』、国立病院機構相模原病院の海老澤先生による教育セミナー『食物アレルギーの診断:プロバビリティカーブをどう用いるか?』を拝聴しました。前者ではSCIT、SLITそれぞれの有効性や利点、欠点についても触れられており、スギ以外のアレルゲンについての発表もありました。後者では食物アレルギーの診断や治療法について臨床経験を踏まえながらわかりやすく解説をされておりました。早期診断・早期治療により成長に伴い食べることができる食品が増えていく、というお言葉が印象に残りました。
 アレルギー疾患が増えてきていることも反映して、例年の学会にもまして企業の展示も防ダニ加工生地を使用した羽毛布団の紹介やアレルギー疾患の新薬の紹介など興味深いものが多くみられました。そのなかには、だれもが一度は食したことのあるお茶漬けで有名な某企業からの食物アレルギー配慮商品の案内というものもありました。前述したように食物アレルギーについては発症機序や治療について臨床・研究ともに進歩が目覚ましい分野ではありますが、「○○を食べたいけど、食べることができない」と諦めている方もやはり少なからずいらっしゃると思います。そのような方々に対して少しでも色々な食品を食べることができるよう企業も努力し開発に取り組んでいることを実感しました。また実際に学校給食やレストランにも卸しているとのことで、好き嫌いはあれども自身も家族にも食物アレルギーがいない筆者ですが食物アレルギーというものを身近なものに感じました。試食用として、卵・乳・小麦・そば・落花生・大豆を使わずに作ったふりかけを頂き、帰宅後に食してみましたが、おいしかったです。
 今回書かせていただいた他にも様々な講演を拝聴することができ、内容の濃い時間を過ごしました。刺激も受け、診療や研究のモチベーションも上がり、意気揚々と帰路につきました。余談ですが、当科の研修医も興味をもって学会に参加してくれ、祇園では抹茶パフェの美味しさに共に舌鼓を打ちました。これも併せてとても有意義な3日間でした。 (文責:宮内 幸子)

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