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第63回 日本アレルギー学会秋季学術大会レポート

2013年11月28日~30日の3日間、東京のホテルニューオータニにおいて第63回の日本アレルギー学会秋季学術大会が盛大に開催されました。会長の大久保公裕先生(日本医科大学耳鼻咽喉科)が掲げられた大会のメインテーマは”Unity”とのことで、アレルギー分野に関与する基礎免疫学から各関連臨床科が、皆で力を合わせてこの領域を発展させようという意味が含まれているとのことでした。当埼玉医科大学アレルギーセンターからもシンポジウム、教育セミナーをはじめ、10を数える一般演題の発表をさせていただき(本コラム文末)、この学会への貢献は大であったものと思われます。以下は筆者が拝聴したプログラムを中心に、この学会の様子をレポートさせていただきたいと存じます。
この時期は他学会も盛んに開催されていまして、教室内の兼ね合いのため、筆者は2日目の発表から参加となりました。去年が春、秋とも大阪開催であったため、関東近郊で開催されると参加しやすいと同時に安心感があります。余談ですが来年以降は年1回の開催になるようですので『秋季』と名がつくのは今回が最後になってしまいます。
自分の発表を無事終えた後、教育講演『食物アレルギーの新しい概念と経口免疫療法の位置づけ』を受講させていただきました。昨今、食物アレルギー関係の話題は人気があり、この講演も満席で立ち見される方が続出しておりました。と言っている自分も立ち見でしたが。講演下さった栗原先生は自験例を示しながら、「半年~1年の経口免疫療法の結果、卵白やオボムコイドの特異的IgEは低下した」、「経口免疫療法を継続したところピーナッツの特異的IgE値は一時的に上昇したあと低下を示した」といった経過を示されました。日本においても海外においても、経口免疫療法は、完治が期待される治療法の一つです。しかしながら、アナフィラキシーなどの重篤な反応を生じる可能性があるなど、現時点では研究段階であり一般臨床では推奨されないというのが共通認識であると再認識しました。実際に経口免疫療法を導入した方について、始める前の検査結果・年齢・時期がほぼ一緒でもその治療経過は個人差が大きかったといった、先生ならではの報告もあり大変勉強させていただきました。どのような機序の違いで持続的あるいは一過性の耐性が得られるかは不明なため、これらの機序が解明されればより安全に且つ効果的に経口免疫療法が施行されるようになる可能性があると思いました。
今学会はイブニングシンポジウムも盛んに開催されており、初日、2日目にそれぞれ5本、計10本のイブニングシンポジウムが開催されておりました。今回聴講したものは『アレルギー診療におけるコンポーネント特異的IgE測定の意義』です。通常、我々の診療では粗抗原を用いた評価を行っていますが、これは偽陽性が生じることも少なくありません。コンポーネントというIgE抗体が反応を示すタンパク質を詳細に評価することで、検査の精度を上げて、より正確な診断が可能になるかもしれないということです。臨床で普及するには、まだまだ克服すべき課題が多く残されている印象を持ちましたが、ある特定のコンポーネントに対する反応が高ければ、アナフィラキシー等の危険を伴う負荷試験を行わなくても食物アレルギーの診断ができる可能性があり、興味深く聴講しました。
最終日にはスギ花粉の経口減感作療法の講習会も開かれ、そちらも大変な賑わいを呈しておりました。12歳以上が対象となるようですので小児(といっても中学生が中心になりそうですが)も出来るようです。こちらも今後、普及していくのでしょうね。
自分にとっては大変有意義な2日間でした。

第63回日本アレルギー学会 埼玉医科大学アレルギーセンター関連発表演題一覧

シンポジウム: 
気管支喘息におけるアレルゲン免疫療法の展望
演者:永田真 埼玉医科大学呼吸器内科_埼玉医科大学アレルギーセンター

温度感受性受容体を標的とした気道アレルギーの制御と治療戦略
司会:徳山研一 埼玉医科大学病院小児科_埼玉医科大学アレルギーセンター

教育セミナー:
アレルゲン免疫療法が日本のアレルギー診療を変える
司会:松下祥 埼玉医科大学医学部免疫学
演者:永田真 埼玉医科大学呼吸器内科_埼玉医科大学アレルギーセンター

一般演題:
気管支喘息患者気道における好中球性炎症関連分子の検討
高久洋太郎1)2) 杣知行1)3) 小林威仁1)3) 中込一之1)3) 萩原弘一3) 金澤實3) 永田真1)3)
埼玉医科大学アレルギーセンター1) 埼玉県立循環器・呼吸器病センター呼吸器内科2)
埼玉医科大学呼吸器内科3)

オウゴニンはドーパミンD1受容体アンタゴニストであり好中球性気道炎症を抑制する
高木理英1) 川野雅章1) 中込一之2)3) 橋本久実子1) 東丈裕1) 松下祥1)3) 大渕勝也4) 金子篤4)
埼玉医科大学医学部免疫学1) 埼玉医科大学医学部呼吸器内科2)
埼玉医科大学アレルギーセンター3) 株式会社ツムラ4)

Modified Pulmonary Index Score(MPIS)を用いた重症喘息発作の定量的評価の意義
古賀健史1)2) 板野篤志1)2) 盛田英司1)2) 植田穣1)2) 徳山研一1)2)
埼玉医科大学病院小児科1) 埼玉医科大学アレルギーセンター2)

ベーチェット病の補助診断法としての自家唾液によるプリック反応(2)
金子史男1) 富樫亜吏1) 野村絵里香1) 中村晃一郎2)
脳神経疾患研究所付属総合南東北病院皮膚科1) 埼玉医科大学皮膚科2)

スギ・ヒノキ花粉症患者における咳嗽の検討
上條篤1)2) 仲田拡人3) 善浪弘善4) 永田真2)5) 加瀬康弘1)2)
埼玉医科大学耳鼻咽喉科1) 埼玉医科大学アレルギーセンター2)
朝霞台中央総合病院耳鼻咽喉科3) 東芝病院耳鼻咽喉科4) 埼玉医科大学呼吸器内科5)

重症気管支喘息患者におけるOmalizumab導入前後の呼気凝縮液中脂質メディエータ濃度の検討
内田義孝1)2) 杣知行1)2) 高久洋太郎2)3) 宮内幸子1)2) 野口哲2)4)
小林威仁2)4) 萩原弘一1) 金澤實1) 永田真1)2)
埼玉医科大学呼吸器内科1) 埼玉医科大学アレルギーセンター2)
埼玉県立循環器呼吸器病センター呼吸器内科3) 埼玉医科大学総合診療内科4)

喘息寛解症例における呼気中一酸化窒素濃度(FENO)と可逆的気道閉塞残存との関
盛田英司1) 植田穣1) 板野篤志1) 古賀健史1) 徳山研一1)2) 金子真理3)
佐藤幸一郎3) 西村秀子3)
埼玉医科大学病院小児科1) 埼玉医科大学アレルギーセンター2) 利根中央病院3)

IP_10による好酸球接着反応におよぼすホルモテロールの効果
野口哲1)2) 小林威仁1)2) 高橋幸子1)3) 内田義孝1)3) 杣知行1)3) 中元秀友2) 永田真1)3)
埼玉医科大学病院アレルギーセンター1) 埼玉医科大学病院総合診療内科2) 埼玉医科大学病院呼吸器内科3)

気管支喘息患者における嗅覚障害の実態について
宮内幸子1)4) 上條篤2)4) 内田義孝1)4) 井上智恵2) 野口哲3)4) 小林威仁3)4) 杣知行1)4) 永田真1)4)
埼玉医科大学呼吸器内科1) 埼玉医科大学耳鼻咽喉科2) 埼玉医科大学総合診療内科3) 埼玉医科大学アレルギーセンター4)

気管支喘息の増悪と片頭痛の関連性の検討
小林威仁1)2)3) 荒木信夫4) 野口哲1)2) 中元秀友2) 永田真1)3)
埼玉医科大学アレルギーセンター1) 埼玉医科大学総合診療内科2)
埼玉医科大学呼吸器内科3) 埼玉医科大学神経内科4)

(文責 小児科 盛田英司)

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