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医師向けTVシンポジウムでセンター長が講演しました

2013年9月20日金曜の夕刻、全国の医師を対象とした気道疾患についてのTVシンポジウムが開催され、当アレルギーセンターからはセンター長の永田真先生が御講演されました。製薬会社アストラゼネカとの共催で、福岡と川越の同社支社内に設置されたスタジオで講演が行われ、全国の医科大学や基幹病院などの医局や会議室などに放映されるシステムでした。
はじめに久留米大学医学部内科学呼吸器・神経・膠原病内科部門准教授の川山智隆先生から『病態から見たCOPD』をテーマとした御講演がありました。COPDの疾患概念、定義、疫学、危険因子、病因、病態生理について解説していただき、大規模研究であるUPLIFT試験からチオトロピウム(スピリーバ)の有効性と、またCLIMB試験よりチオトロピウムにシムビコート(吸入ステロイドと長時間作用型β2刺激薬との配合剤)を追加投与することでCOPD増悪抑制効果が高まることなどをご提示していただきました。
次いでアレルギーセンター長(本学呼吸器内科教授)の永田先生より『喘息急性増悪の炎症病態とその対策』をテーマとした特別講演がありました。
その内容についてですが、まず喘息の増悪因子と気道炎症のメカニズムについての解説がありました。次に喘息の基礎病態であるTh2免疫応答性の気道炎症に対して、吸入ステロイドは抑制効果を認めるもβ2刺激薬は促進作用を有することを示した上で、頓用使用時のβ2刺激薬には吸入ステロイドの同時投与が望ましいことを指摘されました。また、即時型喘息反応の段階でβ2刺激薬と吸入ステロイドを同時吸入すればTh2性サイトカインの産生を抑制できることを踏まえた上で、臨床的にはシムビコートを発作時にも頓用する治療(SMART療法)で重度の喘息増悪抑制効果を示すことができるとのデータが示されました。平行して喘息増悪の基本的な予防対策として、アレルゲン回避が重要であることと、アレルゲン免疫療法が期待されることを示されました。
喘息症状の悪化・誘発の理由の1つに上気道感染症などの感冒があり、それは好中球が関与する炎症病態であることを示し、感染時に産生されるIL-8に刺激された好中球が好酸球遊走を誘導することを示されました。そしてシムビコートに含まれるホルモテロールにはその抑制効果があることを提示されました。その他、感染時における好酸球の接着反応増強には、ウイルスなどの感染時に産生されるサイトカインであるIFN-α/β/γが関与していることを示されました。さらにウイルス感染対応分子として産生されるIP-10が、好酸球接着反応を増強することを示し、ホルモテロールがそのIP-10による好酸球の接着を抑制するとの新知見を提示されました。その上で、最後に感染による喘息の増悪時の対策について、抗ウイルス薬であるオセルタミビル(タミフル)がインフルエンザによる喘息増悪頻度を減少させること、ロイコトリエン拮抗薬はウイルス感染による喘息増悪を抑制すること、シムビコートによるSMART療法は感冒症状を修飾することはできないが感冒による急性増悪を減少させることを提示され、終了となりました。

 このTVシンポジウムでとくに後半のセンター長の特別講演では、当センターで行われている基礎・臨床研究の成果が、実際に気管支喘息の診療の進歩に必要な情報発信として役立っていて、貢献していることが実感できました。当センター、ひいては埼玉医科大学の一員としてこのことを誇りにおもえて有意義なTVシンポジウムであったとおもいますし、全国的にも多くの先生がたがご覧になったということで、喘息患者さんの診療の向上に役立ったのではないかと考えます。(文責:野口哲)

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