本大会は、2013年5月11日(土曜日)~12日(日曜日)の2日間にわたり国保旭中央病院アレルギー・リウマチセンターの岩本逸夫会長のもとパシフィコ横浜で開催された。今回の学会は四半世紀の節目の大会であり、「アレルギー学の新しい飛躍に向けて」というテーマで、これまでのアレルギー学の進歩を統括し今後のアレルギー学を展望するプログラムであった。
当直明けであった私は土曜日朝の仕事終了後横浜へ向かった。3月から開通した東京メトロ副都心線・東急東横線の相互直通運転を利用したところ和光市からあっという間でみなとみらい駅に到着。会場には全国よりアレルギーを勉強するべく多くの人が集まり熱気にあふれていた。小児科医である私にとって自分の専門外の分野も拝聴できるのはこの学会の非常に興味深いところである。今回の学会で最も印象に残ったのはアレルゲン免疫療法についての演題だった。一つはスギ舌下免疫療法である。今まではアレルギー性鼻炎に対する唯一の根治療法は皮下免疫療法であった。これは頻回・長期の通院と痛みを伴う注射が必要な上に頻度は低いがアナフィラキシーショックが副作用として出ることもある。そこでこれに代わる免疫療法が舌下免疫療法だ。スギの抗原エキスを舌の裏に入れるだけであり痛みや面倒な通院から解放される。スギの舌下免疫療法に関しては現在多施設共同第3相臨床試験が終了したという。投与方法やエキス濃度などの検討も必要であろうが、今後の一般診療への実用化が期待され、免疫療法の新たなる時代の幕開けとなる可能性がある。私はこどものアレルギー性鼻炎患者も診ているが、今春は特に症状が強くコントロールに難渋した。実用化されれば重症例をはじめとした鼻炎の治療にさっそく行ってみたいと感じた。もう一つは食物アレルギーに対する食物経口免疫療法である。経口免疫療法のうち緩徐経口免疫療法は誘発試験により実際に食べさせ閾値を決めた後、それより少ない量から徐々に摂取量を増量させていく方法である。現在のところ増量の詳細は各施設によって様々であり一定の見解がない。また、アナフィラキシーのリスクもある。また、食べられるようになっても、それが脱感作状態(一時的にアレルギー反応が弱った状態)か耐性獲得(アレルギーを克服した状態)かの違いを見極める必要もあるなど、一般診療の中で行っていくために克服すべき点が多く残されている。当科でもアナフィラキシーの既往のある例に積極的に食物負荷試験を行っているが、免疫療法の適応や方法などについてさらに検討していきたい。
ところで、会場内でひときわ賑わい、会場の外まで人が溢れかえっていた「総合アレルギー医育成コース」。これは各診療科の垣根を越えた全科総合的アレルギー専門医を目指すことを目的としたプログラムだ。小児科医である私もアトピー性皮膚炎やアレルギー性鼻炎を見る機会があり、総合的にアレルギーを勉強し患者さんに最高の医療を提供できるように努力しなければならないと痛感した。
さて私ごとであるが、2日目の朝、宿泊ホテルから会場に向かう間にi‐phoneを紛失してしまった。気づいた時には時すでに遅し。電源が切れたのか探すこともできない状態であった。結局、2日目は何となく落ち着かないまま最後の講演までを聞き、学会後に予定していた会議に参加したのち、ソフトバンクショップへ駆け込んだ。自分には珍しくバックアップを1か月前に取っていたので幸いにも多くのデータが失われずに済んだ。
学会に参加すると色々と刺激になり、診療や研究のモチベーションが高まります。学会参加による知識のアップデートとこまめなデータのバックアップは大切と感じた二日間でした。(文責:小児科 古賀健史)