11月22日に第31回アレルギーフォーラムを埼玉医科大学の大学内講堂で開催しました。
このフォーラムは普段アレルギー疾患に触れることのない先生方や研修医、看護師、パラメディカルスタッフ、医学生、医学看護師、そして近隣で仕事をされている医師に向けた講演会です。毎回様々な科のエキスパートの先生方を講師にお招きして講演をいただいております
今回のフォーラムには島根大学医学部皮膚科千貫裕子先生をお迎えして、「アレルギー性蕁麻疹の最新の話題~茶のしずく石鹸の問題を含めた食物アレルギーの最新情報~」と題して、成人の食物アレルギーからアナフィラキシーに関して、詳細に分かりやすくご講演いただきました。
アナフィラキシーは、自身が何らかのアレルゲンに接触することで起こす、全身のアレルギー反応です。分かりやすい例は、ハチによるアナフィラキシーでしょう。ハチに刺されることで皮膚が痒く赤くなり、そのうち息が苦しくなります。人によっては血圧が落ちて意識がなくなるような重症の反応を起こす場合もあります。この一連の症状は刺されてからあまり時間を空けずに起こすのが通常です。このようなアナフィラキシーの中には食事をした後に運動することで起こす食物依存性運動誘発アナフィラキシーという病気があります。千貫先生には、最初にこの病気に関しての臨床的なお話をしていただきました。この病気は、食事をした後、運動をすることで起こす病気です。発症するまでに個人差があり、場合によっては数時間後に起こすことがあり、自分では分かりにくいことがあります。診断の為には丁寧に病歴を聴取することが大切です。典型的なアレルゲンとなる食物としては小麦があります。この小麦を構成している成分蛋白であるグルテニンやωグリアジンがアレルゲンであることが特徴的で、血液による検出やアレルゲンに対する皮膚反応で診断が可能ですが、場合によっては直接摂取していただいて、症状が出るか確かめないと難しい場合もあるとお話しいただきました。
この小麦の構成成分を加水分解した人工的なアレルゲン蛋白、加水分解小麦によるアレルギーがあります。このアレルゲンが原因で起こるアナフィラキシーに関して次にご講演いただきました。加水分解小麦と言えば「茶のしずく」石鹸に含有している成分で、昨今問題になったアレルゲンです。皮膚からの感作でおこすアナフィラキシーであることが珍しいと言えます。先ほどの運動誘発アナフィラキシーでは痒みを伴う全身的な皮膚症状を呈するのに対し、この加水分解小麦の場合は眼瞼のむくみを起こすことが多いことが特徴的です。この疾患の発見から診断に至るまでの経過は大変ドラマチックで大変感銘しました。
最後に、子持ちカレイによる食物アレルギーがもとで起こすアナフィラキシーに関してお話しいただきました。この子持ちカレイにアレルギーの方は、牛肉にもアレルギーであることが多く、皮膚症状などのアレルギー症状やアナフィラキシーを起こすことがあるとのお話でした。
千貫先生がしていただいた講演は、日常の臨床的な発見から精査そして診断を下し、その基礎となる科学的データを確実にご自身の研究で確立されておられ素晴らしい内容でした。このフォーラムには医学生や研修医も参加しています。彼らのような若い方からも多くの質問がされていたのを拝見して、大変素晴らしい講演だったと実感しております。島根県の出雲大社ではちょうど神在祭が始まるようでした。千貫先生には、多くの人で賑わうなか、当大学にいらしていただき感謝しております。 (文責 内科 杣知行)