9月15日~16日の日程で第49回小児アレルギー学会が大阪国際会議場で開催されました。大阪という場所柄なのか、真面目なテーマにユーモアを含んだ、良い意味で砕けた内容のものからスタートしました。初日の特別講演の安藤忠雄さんは『日本に未来はあるか』というタイトルで、「今の日本の子供の目は疲れ切っている」とか「感動を体験できる機会が少ない」といったことを自身の仕事話に交えながら話されました。2日目の特別講演の木暮太一さん(経済入門書作家、経済ジャーナリスト)は『わかりやすく説明する力』というタイトルで、『専門用語を使用されると理解しにくい』や『自分と相手との認識のズレを考えることが必要』といったことを自身の体験を例に取り上げ、『わかりやすい説明』を行うために何を取り入れるのか?というポイントを、笑いを誘いつつ話されていました。
さて、本題のアレルギーに関してですが、ここ数年の食物アレルギーの関心の高さからか、関連のシンポジウムや教育講演は、施設内でも大き目の会場が割り当てられていましたにもかかわらず、立ち見が続出していました。『分かりやすい食物アレルギー診療の実際』というタイトルのシンポジウムでは、管理栄養士の立場から、食物除去によりどのような栄養素の欠乏(例 カルシウム、ビタミンDなど)が生じる恐れがあるのかといった内容や、大分県の大型給食センターで行われている食物アレルギーを持つ子への取り組みなど実例を挙げた発表もありました。教育講演『「食べる」ことを目指す食物アレルギーの診療と治療』で、演者の伊藤節子先生は食物の抗原性は加熱などの調理法や副材料の影響を受けることを強調されました。例えば、卵白アルブミンは加熱することで低アレルゲン化が得られますが、通常の調理法では加熱温度を上げるよりも加熱時間を長くすることが低アレルゲン化には有効であることを話されました。また、卵白を混ぜ合わせる副材料により低アルブミン化は程度が異なることを話されました。具体的にはタマゴボーロには全卵あるいは卵黄が含まれています。このうち卵黄のみでなく全卵を含むものは、製造過程で加熱されてはいますが、混ぜられたでんぷんにより不溶化が生じにくくなり、その結果、タマゴボーロ1個に含まれる卵白アルブミンは20分加熱した固ゆで卵1個分よりも多くなっているそうです。このため、ゆで卵の卵白摂取可能であっても全卵を含むタマゴボーロを摂取可能とはならないそうです。
さて、当院からは古賀助教、板野助教と小生が一般演題を出させていただきました。古賀助教は心因性咳嗽に関する演題を、板野助教は消化管アレルギーに関する演題を、小生は気管支喘息のバイオマーカーである呼気一酸化窒素濃度(FeNO)と末梢気道閉塞の関連について発表しました。徳山教授は教育講演の座長を務められました。当アレルギーセンター長の永田先生も2日目の教育セミナー演者として本学会へ招待されていました。
学会は毎度のことながら、新しい知識と日常診療への刺激を与えてくれるいい機会となっており、今回もそれに違わないものとなりました。取りあえず、この学会で得た知識で、点鼻薬は『鼻が通っている時間帯に、通っている側に』使用するよう指導していこうと思います。 (文責:小児科 盛田英司)