7月6日~7日に、第22回国際喘息学会日本・北アジア部会が、国立病院機構福岡病院 岩永知秋先生が会長で開催されました。本学会は、ホテルか会議場で開催されることが通例でしたが、今回は福岡市博多にある九州大学医学部百年講堂が会場ということで、筆者は、いつもとは違う意味でも興味を持って参加してきました。その九州大学医学部百年講堂は、九州大学の広大な敷地内に独立して存在し、比較的新しく建てられた施設であると学会運営の方からお聞きしました。近代的な建築でありながら、どことなく歴史を感じさせるような印象を抱かせる外観で、会場内は清潔感があり参加している間も余計な緊張感を抱かずに、発表や講演に集中できました。同時期九州で停滞していた梅雨前線の影響で、数日前から豪雨が続き不安定な天気でしたが、多くの参加者が見受けられ、学会は非常に盛会でした。
本学会は、喘息に特化した比較的専門色の強い学会です。プログラム内容のほとんどが、この分野のエキスパートが講演する、招請講演や基調講演、ランチョンセミナーと、シンポジウムから構成されています。講演内容も小児喘息から成人喘息、最近注目されている検査法や治療法、現在の問題点からガイドラインを再検討した内容まで、2日間の会期で喘息に関するトピックスは一通り抑えられる充実した内容です。今回は、高齢者の方の喘息も増加してきていることから、閉塞性肺疾患(COPD)との関連性に主眼を置いた講演が散見されました。東北大の黒澤一先生は、COPDの気道狭窄を画像上の変化を、動画を用いて講演されました。このような呼吸性変化を実際に目にすることはなかなか出来ないので、インパクトの強い、理論を実感できる発表でした。末梢気道病変の評価に活用されることの多いモストグラフの開発者でもあり、この測定法に関する理論や実践に関しても詳細に発表され、気管支喘息とCOPDの鑑別に有用であると締めくくられていました。またClive Page先生は最近日本でも浸透している長時間作用型β2刺激薬を現在臨床試験が進行している薬剤も含め解説されました。同様に長時間作用性抗コリン薬に関しても、臨床試験が進行している薬剤も含め詳細な発表をされました。将来的な幾つかの吸入薬の合剤に関しても触れ、充実した内容でした。また気道炎症の病態と治療に関するシンポジウムや、喘息治療のガイドラインの現状に関するシンポジウム、維持療法におけるステイトメントなどがレビューされていました。「生活習慣と喘息」と題したシンポジウムでは、最近話題となっている肥満と喘息に関する講演や、黄砂の小児喘息への影響に関する講演は、実際に論文で発表された先生が様々なデータとともに解説され、秀逸した面白い内容でした。
一般発表はポスターによる形式で行われました。私達の施設からは3題発表しました。私達センターの得意とする好酸球に関連した基礎的研究が2題と、抗ヒトIgEモノクローナル抗体であるオマリツマブの臨床効果に関する発表です。活性化好中球の好酸球遊走への効果をフォルモテロールが抑制するという基礎的検討は、重症喘息患者への治療の足掛かりになることが期待されます。またオマリツマブが喘息患者の喀痰中の好酸球を減少されることは、治療上有益なデータと言えます。また永田センター長は、シンポジウムの司会も担当され、学会では精力的に活動されておりました。
来年度は私達、埼玉医科大学の主催で、6月28日、29日に東京の都市センターホテルで開催されます。今年の学会より、さらなる充実した内容を企画検討していますので、多くの方(医師、看護師、コメディカル、医学生)のご参加をお待ちしております。 (文責 内科 杣知行)