2011年12月4~8日、メキシコのカンクンにおいて、世界アレルギー学会World Allergy Organization(WAO)が主催する第12回World Allergy Congress(WAC)が開催されました。
プレナリー講演では、唯一の日本人スピーカーとして中江進先生が登場しアレルギー疾患にかかわる最新のサイトカインとしてIL-33の役割についてご講演なさいました。中江先生らはIgE抗体を介さないアレルギー反応の経路について、IL-33欠損マウスをはじめとする様々なKOマウスを用い、IL-33がプロテアーゼの一種であるパパインにより主に気道上皮細胞から産生され、それによりエオタキシンの産生誘導が起こり好酸球遊走が促進されることをその機序も含め詳しくお話しなさいました。発表後の質疑応答も非常に活発で関心の高さをうかがわせていました。
埼玉医科大学アレルギーセンターからは呼吸器内から3演題をエントリイしておりました。そのなかで鈴木朋子講師は『Activation of PAR-2 induces myofibroblast transformation via a TGF-b and GSK-3b/b-Catenin dependent pathway in tissue remodeling in the asthmatic lung.』(PAR-2と呼ばれるトリプシンなどのレセプターが気管支喘息におけるリモデリングにかかわる可能性)についてポスター発表をおこないました.また川島彬子助教は、『IL-8で刺激した好中球に長時間作用型β2刺激薬であるホルモテロールを加えたさいに好酸球の基底膜遊走が抑制される』ことを卒後4年目ながら,見事に口頭で発表しておりよい勉強になったのではないかと思われます.
川島助教と筆者はそれぞれbreakfast symposiumに20USDを支払い参加しました.川島医師は『Manegement of COPD』,私は『Omalizumab for Asthma』を選択しましたが,ともに参加者が少なく英語が不得手な者としては過酷なセミナーとなりました.川島医師は75分のフリートークだったそうで,ご自分の発表より緊張されたそうです.私も手が冷たくなるのを感じながら拝聴しました.Omalizumabの効果と副作用に主に焦点をあわせたものでしたが,好酸球にも影響をおよぼすところはMichael S.先生(米国)も興味をもたれているようでした.
カンクンはメキシコきってのリゾート地としても有名で,車で2~3時間のところには世界遺産に登録されているチチェン・イツァというマヤ文明最大の都市遺跡があります.学会最終日に社会勉強のために行きたかったのですが,筆者が一晩に20回もの下痢攻撃をくらい,立つこともままならない状態になったために断念いたしました.それでもホテルからみえるコバルトブルーの海は疲れた体と心を癒すには十分でありました.
発表にあたりご指導いただいた永田教授をはじめ,病棟を守ってくれた医局員の皆様に感謝いたします. (文責:西原冬実)