9月7日から9月11日の5日間、オーストリアの首都ウイーンにて欧州呼吸器学会(ERS: European Respiratory Society)が開催されました(写真1)。
写真1 ERSレセプションホールにて
オーストリアはほぼ北海道と同じくらいの面積で東西に細長く中央アルプスが横たわり、ドナウ川が流れています。学会が開催されたウイーンは人口140万人の都市でハプスブルク帝国の歴史的遺産が旧市街を中心に多く存在します。学会会場はドナウ川の近傍旧市街の北側にありました。
今回私たちは3人で学会に参加しました。昨年も感じたことですが、今年も様々な国籍の方たちが現地へ足を運び精力的に学会に参加していました。
当院からはポスター2題を発表しました。石井玲奈先生はFeNOと末梢血好酸球数のバイオマーカーを基準に喘息を分類しclinical remissionの達成率に関する発表、星野佑貴先生は喘息における血清IL-36濃度の臨床的意義に関する内容です。ポスター発表は午前と午後にあり、各々90分くらいディスカッション時間があります。その時間内に2人のチェアマンが順に回ってきて対話型での発表形式で5分程度行います。その時間内にチェアマン以外の参加者からポスターに関する質問が飛び交い、活発な討論が行われます。石井先生の発表には、時間中閲覧者が定期的に来られ、休息する時間もなく質問に回答していました(写真2、写真3)。初海外発表でしたが落ち着いた質疑応答で素晴らしかったです。星野先生の発表にはFan Chung先生やMario Castro先生といった有名な方が見に来られ興味を持たれていたのが印象的でした。
写真2 石井玲奈先生
写真3 石井玲奈先生と閲覧者
写真4 星野佑貴先生
写真5 星野佑貴先生とMario Castro先生
ERSはHot topicsで最近のトピックス、State of the art session、Year in reviewで年間概要を発表するほか、studioブースがありpro/conやExperts interviewなどYouTubeのように配信を意識したセッションがあります。もちろんSymposiumや一般口頭発表のOral presentationもあり、全てを網羅するのは難しく、後ほど配信で見ることとなります。今回はLittle humans and machines, getting the balance right in childhood asthmaというテーマのためか、アプリケーションを用いた評価などIoTに関するセッションが特徴的でした。またポスターでは慢性咳嗽のセッションが2日連続であり、咳嗽に対する興味が多いのに驚きました。対して基礎的な研究に関するまとまったセッションが少なく、臨床に係わる研究セッションと同じセッションに交じっている印象でした。
私たちが聴講したのは喘息やCOPDに関する一般発表が中心となりました。生物学的製剤のP1、P2研究ではLong active TSLP抗体やIL-33抗体のCOPDへの効果、long active IL-5抗体の発表がありました。またmTOR拮抗薬やJAK阻害剤などの興味深い話を聴くことができました。海外の学会での醍醐味は異文化交流です。私たち一行も学会の合間に市内観光や食事をしました(写真6)。オーストリア料理とザッハトルテは必須です。ウイーンは音楽の街と言えますし、2人のポスター発表が終了した夜に国立オペラ座で椿姫のオペラを鑑賞しました(写真7)。芸術も堪能し充実した学会でした。
写真6 オーストリア料理を学会参加者で
写真7 オペラ劇場内を客席から撮影
文責 呼吸器内科 杣知行