当アレルギーセンターは、アレルギー疾患の専門的な診療の提供、病態の研究、またさらにさまざまなアプローチからの情報発信を活動の一部といたしております。今回、中外医学社より、筆者(センター長永田)を編著者とした「大人の食物アレルギーハンドブック」という単行本を出版させていただきました。
食物アレルギーは以前には小児領域の問題と捉えられていましたが、現在の日本では、成人内科領域でもその重要性が大きく増してきています。
その一部にはもちろん小児食物アレルギーの重症例の持ち上がりがあるのですが、重要なことは成人に多く発症する、“オトナに特徴的なタイプ”の実像が判って起きており、これらが大きな問題となってきているのです。
成人発症型の食物アレルギーには職業性のものや、例えばマリンスポーツから発症する納豆アレルギーなど特殊な趣味や生活習慣に関連するもの、お化粧あるいはスキンケアから発生するもの、そして特に長期にわたる動物の飼育に関連するものなどが含まれています。また気管支喘息や花粉症やアトピー性皮膚炎など、他の一般的アレルギー疾患における合併症としても高頻度であることが判ってきています。その中には関東地区にも非常に多いカバノキ科の花粉症に関連する、各種のフルーツやナッツ類、豆類などのアレルギーが含まれます。また“秋の花粉症”ヨモギ花粉症でみられるスパイス・アレルギーなども成人では重要です。成人では適切な最小限の回避指導と、特に“オトナの事情”での過労や飲酒また鎮痛薬使用などで生じやすくなる、アナフィラキシーの予防・管理が重要です。
本書では、受診数が増えてきて専門医も対応に苦慮することの多い大人の食物アレルギーについて、一般の方にもわかりやすいハンドブックを作りたいと考えました。小児から継続してくるパターンのものと、大人になってから発症する病態と、それぞれについてポイントをまとめたものです。我が国のエキスパートの先生がたに共著をお願いし、最高の知識とノウハウをまとめさせていただいたものになっています。価格は一般の方々にも手にお取りいただきやすいよう、出版社にお願いして通常の同クラスの書籍のおよそ半額(2800円+税)とさせていただきました。本書が広く医療関係者等の皆さまや、食物アレルギーに悩まれる方々に、お役立ていただきたいと切に願うものです。
(文責 永田 真)