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アレルギー週間市民公開講座を開催しました。

まもなくスギ花粉が関東平原を覆う時期がやってまいりました。例年この時期に、公益財団法人日本アレルギー協会の主催、埼玉県で唯一のアレルギー疾患医療拠点医療機関である当院の後援にて、当県のアレルギー週間市民公開講座が開催されます。昨年度は新型コロナウイルスの感染拡大に伴い中止としておりましたが、今回はWEB開催ということで、2年ぶりに開催をさせていただきました。

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 まず筆者が日本アレルギー協会の役員としてあいさつをさせていただきました。アレルギー領域は軽度のものから重症まで混在しますが、もはや国民の三分の一以上がなんらかのアレルギー疾患をもっているとされること、ゆえに21世紀の国民病ともいわれること、そしていわゆる“アトピー(アレルギー)・ビジネス”といわれるような非科学的でときに高額な民間療法も蔓延しており、患者さんやその家族にはぜひ正しい知識を身に着けて頂きたいと話をさせていただきました。

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開会のあいさつをする筆者

 そののちに、当センター関連の医師3名によって市民向けの講演を行いました。
まず埼玉医科大学耳鼻咽喉科の吉村美歩先生がスギ花粉症について話をされました。鼻がムズムズし始めた段階で早期から点鼻ステロイド薬などの季節中投与を開始する“初期療法”の効果が非常に高いこと、一方で各種のいわゆる民間療法については科学的には有効性を期待することが難しいこと、本年度の症状がお辛かった場合、来期以降に向けて体質改善的な根本療法である「アレルゲン免疫療法」があって、特にいまは比較的簡便な舌下免疫療法が有益であることなどのお話をされました。

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講演される吉村先生

 スギ花粉症あるいはダニアレルギーによる気管支喘息・鼻炎に対する根本療法の「アレルゲン免疫療法」については、当センターは多年にわたってわが国で最も意欲的に取り組んできた代表的施設です。筆者がまとめ役を務めさせていただいた日本アレルギー学会公式手引書が、同学会HPからも閲覧できますので、ご関心のあるかたにはぜひご活用いただければと願います。

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筆者がまとめ役を務めた日本アレルギー学会の「アレルゲン免疫療法の手引き」

 ついで気管支喘息について、埼玉県立循環器・呼吸器病センターの高久洋太郎先生からご講演を頂戴いたしました。高久先生は東京慈恵会医科大学の大学院生であった時代に、当センター呼吸器内科の研究室に国内留学をされて、好酸球の研究で学位を取得された、いわば当センターのOBです。高久先生は喘息の管理におけるアレルゲンやとくに受動喫煙の回避などについて力説され、そして基本治療である吸入ステロイドを中心とした吸入薬物療法などについてわかりやすく解説をされました。

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講演をされる高久先生

 10分の休憩時間ののちに、本学小児科の板澤寿子准教授による「食物アレルギー」の講演が行われました。昨年の秋に改定された食物アレルギーガイドラインなどに基づいて、新生児・乳児において消化器症状で発症する消化管アレルギーの関連のはなし、食物経口負荷試験の重要性、そしてそれに基づいて無用な除去をしない“最小量の摂取の重要性”について力説されました。食物アレルゲンの変化が著しく、特に最近は1~6歳では魚卵、7歳以上では甲殻類の新規発症が増えていること、さらに我々内科医も日々頭を悩ましている“花粉‐食物アレルギー症候群”についても言及していただいたので、成人での食物アレルギー患者さんにもプラスは大きかったとおもいます。

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講演される板澤先生

 最後にこの市民公開講座では恒例の、公開質問を頂戴してのQ&Aセッションが設けられました。今回は対面形式でないこともあって、事前にWEBにて頂戴した質問のなかから重要度が高いものを中心に、約30分間の時間にて、4名の医師で割り振って、また相互に追加補完をしながら答弁をさせていただきました。

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公開質問セッション時の様子

 市民みなさまから頂戴したご質問の数々には各種の管理法や治療法についてのものが多かったのは例年のとおりでしたが、時節柄、新型コロナ感染症と、花粉症あるいは喘息の鑑別についてなどのご質問も頂戴し、活発なセッションとなったとおもいます。
本市民講座はコロナ禍のなかでもあり、円滑な開催が危ぶまれた面がありましたが無事に終了でき、また一方では北京冬季五輪の開催中でもあってご参加人数の心配もありましたが、多くのご参加ご質問を頂戴して、意義の高い市民講座となったものと考えております。なお2023年の本市民講座は2月4日土曜日に、今回と同様にWEBでの開催の予定であります。患者さんやそのご家族はもちろんのこと、広くアレルギーにご関心をおもちのみなさまのご参加・ご聴講をお待ちいたしております。(文責 永田真)

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