例年この時期には、日本全国で、公益財団法人日本アレルギー協会が主催するアレルギー週間市民公開講座が開催されます。2019年度の埼玉県の市民講座は、当センターのスタッフが中心となり、2月2日土曜の午後13~15:30にわたり、志木市の志木市民会館パルシティ2F会議室において開催いたしました。当日はインフルエンザがまだ猛威をふるうなか、多くの患者さんやそのご家族が熱心にご参集くださいました。
スギ花粉症や気管支喘息、また食物アレルギーなどのアレルギー疾患では正確な専門的管理・治療をおこなえるアレルギー専門医が日本では少ない現状があります。そのような事情もあって、医学的根拠のない民間治療が高額で行われていたり、また専門医でないどころか日本アレルギー学会員でない医療機関がアレルギー科を標榜している場合が少なからずあったりもいたします。そういった視点で、まずは市民のみなさんにアレルギー疾患についての正しい知識をもっていただき、管理の向上につなげていただきたいことを、司会担当の筆者が開会の辞にて述べさせていただきました
そののちまず「スギ花粉症」について、埼玉医科大学病院耳鼻科教授の上條篤先生がご講演を担当されました。
同先生はスギ花粉症が非常に増えていて国民病化していること、正しい治療によって十分にコントロールできること、一方でドラッグストアなどで入手できる血管収縮薬の鼻炎噴霧薬は即効性があるものの危険性があること、そして根本療法としてのアレルゲン免疫療法が活用できることなどをふくんだ御講演をしていただきました。
次いで「気管支喘息」について、当センターOBでもある、現・埼玉県立循環器呼吸器病センター医長の高久洋太郎先生がご講演を担当されました。
気管支喘息の病態、この疾患が増える一方であること、しかし各種の吸入ステロイド療法を中心とした薬物治療が発達していること、根治はむずかしいもののスケートの羽生選手や清水宏保氏をたとえに出されて薬物治療を正確にもちいれば十分に克服して活躍できること、そして根本療法としてアレルゲン免疫療法がつかえる場合があることなどを含んだお話をいただきました。
そして「食物アレルギー」につきましては当センターで活躍される本学小児科教授の徳山研一先生が講義を担当されました。
食物アレルギーには5つの病型があること、その5つの病型のご説明と、血液検査でIgE抗体が陽性となっても安全に食べられていればあえて摂食制限をする必要はないこと、必要に応じて経口負荷試験を行うことには大きな意義があること、そして終盤には最近の経皮感作が原因になることを示す学説や、注目を浴びている経口免疫寛容の話題などもふくむ、大変に丁寧な講義をしていただきました。いずれのご講演も、大変に好評でありました。
15分の休憩時間の間に市民のみなさんに質問をかいていただき、集計して分担をきめさせていただいたのちに、ラスト45分間で各演者あるいは筆者がそれを読みながら回答する形式で、Q&Aのコーナーを設けました。
例年どおり食物アレルギーついてのご質問が複数ありましたが、本年度はとくにスギ花粉症の治療にまつわるご質問が非常に多かったとおもいます。そのなかにはアレルゲン免疫療法の価格や作用などについてのご質問や、また多少は効果があるかもしれない?ヨーグルトなど乳酸菌製品、さらに空気清浄機の効用などについてのご質問などもみられました。本公開講座は、3人の先生がたの講義と、そして患者さんご自身はもとより、そのご家族などの日々のご疑問についての質問にもお答えでき、大変に有意義な会になったとおもいます。アレルギーに悩む志木市の市民のみなさんを中心とした患者さんやご家族のみなさんに、少しでもお役に立てたのであればありがたいと思う次第です。なおこの市民公開講座をご後援くださった杏林製薬さんには、この場をお借りして感謝申し上げたいと思います。(文責 永田真)