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第61回日本アレルギー学会秋季学術大会参加記

 11月10日~12日、第61回日本アレルギー学会秋季学術大会(日本大学医学部先端医学系分子細胞免疫・アレルギー学分野、羅 智靖会長)が、品川の新高輪プリンスホテルにおいて開催されました。この学会報告に先立って、今回はじめてコラムを書かせていただきますので簡単に自己紹介をしたいと思います。私は耳鼻咽喉科専門医であります。7月から埼玉医科大学にお世話になっています。総合アレルギー科医を目指し、ふらふらこの地に辿り着きました。現在は永田・アレルギーセンター長、小児科・徳山教授、皮膚科・中村教授、そしてもちろん耳鼻咽喉科・加瀬教授にご指導いただいております。
 さて、本題の学会ですが、いつもながらアレルギー学会はその規模に圧倒されます。会場は12会場に分かれており、同じ時間帯にいくつものシンポジウム、ミニシンポジウム、一般口演などが並行して行われているため、正直そのどれをも拝聴したいよくばりな小生はどれを聞こうか迷うばかりであります。
 学会会場は熱気にあふれており、参加者のアレルギー学に対する熱い思いがほとばしっております。そんな雰囲気に負けまいと小生も10日木曜日教育セミナー(いわゆるランチョンセミナーでお昼のお弁当付き)の長蛇の列に並びました。お題は「皮膚感作とプロアクティブ療法」。プロアクティブって何(皮膚科の先生には常識なのかもしれませんが)? 抄録を読むとなんだか最近注目されているとのこと。演者は浜松医科大学の福家先生と、横浜市立大学の猪又先生。開演時間が近づき、聴講を待つ長蛇の列が動き出した。勉強しながらお弁当も食べられるだ(2倍お得)。会場入り口へと足をすすめる。突然係りのヒトが叫ぶ!「申し訳ございません、お弁当が品切れです」。トホホ、しかし、何とか椅子だけは確保(空腹の方が集中できるやい!)。多くの立ち見が出る中、何とかおちついて講演を拝聴した。どうやらプロアクティブ療法とは、アトピー性皮膚炎治療の概念で、要するにステロイド塗布によって皮疹が良くなった後、すぐにステロイドを中止するのではなく、再燃を抑制すべく、徐々にステロイド治療の間隔を空けて治療をしていくものらしい。これに対し、ステロイド中止後、再燃したら再度治療を再開するのをリアクティブ療法と呼ぶらしい。考えてみればいつのころからか小生もしつこいかゆみを訴える外耳道湿疹患者にこの治療法を奨めていた(エビデンスはありません)。興味深かったのは乳幼児アトピー性皮膚炎児にみられる食物アレルギーの感作は皮膚でおこるというDual-allergen exposure hypothesisである。すなわち、ピーナッツオイルを塗っている児にピーナッツアレルギーが多いという事例がわかりやすそうである。要するに皮膚のバリアー機能が破綻していると、食物も含め様々な抗原が皮膚から侵入し感作を成立させるというもので、反対に皮膚炎を改善すると喘息症状や鼻炎症状が改善するということだ。そういえば、私の家内はトマトアレルギーである。トマトを食べると全身倦怠感や胃腸症状をきたすのであるが、一昨日、トマトの皮をむいていたら、その10分後程度から全身倦怠感を訴えていた。手に傷がないか確認したところ、わずかに傷がある。ずっと、経口感作で発症したものと信じてきだが、もしかすると成人の食物アレルギーの一部は経皮感作が原因かも(特に主婦は)?などということはないだろうか?
 さて、木曜日のイブニングシンポジウムは「最新の喘息治療と今後の展望」を聞こうと会場にいったが、すでに会場は満杯、隣の「高齢者喘息を考える」の会場に入った。ご存じのように2010年の喘息による死亡は2000人ちょっとであるが、そのうちの90%は65歳以上の高齢者である。高齢者治療の問題点について、例えばステロイド吸入薬が指の力の関係で使用しにくい、吸入力が弱い、器具の操作の習得が難しい、LTRAの反応性が悪い、高齢者では末梢気道病変が有意に強い、などが問題点としてあげられていた。そんな中、吸入薬剤の選択(pMDI製剤)、繰り返しの吸入指導の重要性、LABAとしては貼付薬の簡便性(スポンサーご推薦)が強調されていた。
 金曜日(朝からライノウイルスの教育講演を拝聴、招待講演でProf Liebemanがアナフィラキシーについて講演など盛りだくさん)、土曜日(免疫療法のシンポジウム等)の要点も述べたいと思ったが、とても書ききれない。最近のトピックである食物における経口免疫療法や上気道と下気道疾患の関連などは個人的に興味があるが、この辺で筆をおきたい(キーボードから手を放したい)。おっと、大事なことを忘れていた。永田センター長、松下 祥免疫学教授、徳山小児科教授、善浪耳鼻科准教授など、当センターの先生方も教育講演、シンポジウムなどでバリバリご活躍されていたことを申し添えておく。あと、品川アクトス内にあるオイスターバーはおいしかったなぁ。 (文責 上條 篤)

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