2019年10月18日18時より埼玉医科大学本院丸木記念館において、Severe asthma special seminar 2019を開催いたしました。コロラド大学医学部教授でいらっしゃるMichael E. Wechsler先生をお招きしての特別講演企画でありました。
Wechsler先生は特に難治性の好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(eosinophilic granulomatosis with polyangiitis:EGPA)に対する抗IL-5抗体製剤の有効性を報告されたことでご高名な先生であります。今回は国際製薬企業アストラゼネカ主催の研究会のために来日されており、その司会を永田センター長がご担当されるというご縁で、埼玉医大のキャンパスにまでおいでくださりました。
EGPAとは、本邦では元々チャーグ・ストラウス症候群という病名で認知されていた重症喘息を伴う全身性血管炎を本体とした難治性疾患です。その病態には名前の通り好酸球の関与が認知されており、好酸球の増殖を阻む抗IL-5抗体製剤の有効性が推測されていました。2017年5月に名門誌New England Journal of Medicine(NEJM)において、Wechsler先生は難治性EGPA患者に抗Il-5抗体製剤を投与し、寛解維持期間や寛解維持率がプラセボ群に対して有意に改善されたことを報告されました。またその他にも長時間作用型β刺激薬療法に対するβアドレナリン受容体遺伝子多型の影響や、気管支熱形成術の有効性についての北米大規模臨床研究のおまとめ役として成果を報告されるなど、今日の特に重症喘息の臨床研究における第一人者の先生であります。
今回は気管支喘息におけるphenotypeとendotypeの解説に始まり、その病型や各種のサイトカイン、そしてそれらにより気道に集積して活性化する好酸球の病態への関与等を包括的に講義してくださいました。本講演では、呼吸器内科杣准教授がfirst authorで報告された気管支喘息の急性増悪リスク(末梢血好酸球数、とくに好酸球数と呼気NO値の両者が揃って高値であると喘息の急性増悪リスクとなる)についても触れられ、埼玉医大の研究報告についてWechsler先生よりお褒めの言葉をいただきました。
またご講演の後半には、最新の知見を交えた抗IL-5Rα抗体製剤、抗IL-4/IL-13抗体製剤をはじめとした生物学的製剤の臨床試験結果についてもおはなしをいただきました。当科を含め小児科や皮膚科などアレルギー疾患診療に従事する診療科医師にはとても良い勉強、刺激となりました。ディスカッションでは当センター主催勉強会等には準レギュラー的にご参加くださる、防衛医大呼吸器内科の宮田純先生(懇親会の集合写真で左から2番目)などが活発なご質問、討論をされていました。
終了後、学内レストラン「フォンテイヌ」において懇親会が開かれました。
Wechsler先生はもともとモントリオールのご出身で学生時代はカナダの国技アイスホッケーのGKだったそうであり、本学アイスホッケー部の主将であった小児科古賀医師(写真↑のツーショット~!)、また同部のGKであった永田センター長などともアイスホッケー談義にも華が咲いていました。また埼玉医大呼吸器内科のもうひとりの教授である仲村秀俊教授(集合写真左から3番目)とは同先生のボストン留学時代にご一緒であられたことがある由で、久闊を叙されていました。
当アレルギーセンターは現在、日本アレルギー学会の関東支部、またアレルギー・好酸球研究会の事務局などを預かるだけでなく、2021年には日本アレルギー学会学術大会を主催することとなっており、今後も我が国におけるアレルギー疾患研究の拠点のひとつとして、今回のように国際的研究者を招請しての特別講演会等を継続的に開催していければありがたいものと存じます。(文責 呼吸器内科・片山和紀)